そこで井上さんは、自分たちのためのボランティア組織を考えようと、町の広報紙を使って、「一緒にボランティアを考えませんか?」と呼びかけ、集まった五名で月に一回の勉強会を開始した。平成八年十二月のことだった。
「当初は勉強会を重ねるうちに、誰かが団体の設立に向けて動きはじめてくれるんじゃないかと期待してたんです。そしたら、私は行政側の人間として、できる限りの応援をしようと…。でも実際には、そういう人は出てこなかった。それで、もう、自分でやるしかないと腹をくくったわけです(笑)」
みんなで協力しながらふれあいのある地域社会をつくりたい
団体設立に当たって、井上さんが重視したことは、大きく分けて三つ。
まず一つは、中核メンバーの決定だ。こうした団体づくりは一人ではできるものではない。そこで、一緒にやっていく人が周囲から見て、「あの人がやっているなら私も…」と思ってもらえるような人に仲間になってもらうよう働きかけたのだ。
「幸い、町の文化協会の会長、女性問題のスタッフの代表者、行政のヘルパーや社協からも、といったそうそうたる方々がメンバーになってくださいました。そして、みなさんがそれぞれにネットワークを持っている方々でしたから、口コミでさらに、どんどん仲間を呼び集めてきてくれた。これは本当にありがたかったですね」