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まず、周囲の側としては、当然ながら「こんなこともできないなんて、変だ」とか「行動が遅い」などは禁句。日常の何気ない会話やコミュニケーションの積み重ねで、高齢になっての不安も解消されおだやかな気持ちで毎日を過ごすことができる。下仲さんも「正常な老化について家族も学ぶ必要があります。また正しい知識を知ることで、いずれ自分の老年期を楽しく送ることも可能ですから」と強調する。

一方、高齢者の側への注文。

長嶋教授は「高齢者も遠慮せず、やりたいことは主張する。そして積極的に体験してみるといい」と語る。年齢と共に生理的な老化は起こるが、精神的な老化とは必ずしも一致しない。

無気力と評される近頃の若者以上に好奇心旺盛な人は大勢いる。やりたくないことも含めて、とにかく自分で決めて、周囲に意思表示をすることが大切だという。ただしその際「きちんと相手の話を聞いて、必要なことを受け入れるかどうかが『心の硬さ』の分かれ目。最近問題になる高齢者と子どもの公園の奪い合い(都会でゲートボールと子どもたちの遊び場の縄張り争いなど)にしても、高齢者が譲るくらいのゆとりが必要。俺が、俺が、という主張だけでなく、子どもや地域社会に対して自分の知恵を還元しようというサービス精神を持つことも大切ですよ」と助言している。

「高齢者は高齢者同士で集まるだけでなく、家族や若者、地域社会の人とも極力接してください。情報交換することが大切なんです。そして本音で本当のことをいい合える環境をつくることが大切です」(長嶋教授)。でなければカメラ、俳句、読書など、とにかく自分一人でも楽しめるものを持っている人も強み。

当たり前のことながら、高齢者といってもメンタルな部分はさまざま。話を聞いてほしい人、一人でいるのが好きな人。画一的な枠で固めず、じっくり時間をかけて相手に合った接し方を見極めることが必要だ。豪華なイベントよりも、高齢者が「自分はわかってもらっているんだな」という日常の場面、場面を積み重ねていくことが、やはりいちばん大切なのだろう。

みなさんの周りにはどんなエピソードがありますか?ご自身はいかがでしょうか?ご意見・ご感想、体験談をお待ちしています。

 

 

 

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