ら「私はこうである」と自己主張したいが、弁舌さわやかには説明できず、また世話を受けている遠慮と辛さから、ぶっきらぼうに結論だけをぶつけるということも…。とにかくまずは、人生の先輩に接するんだという心配りをもう一度忘れないようにしないといけないですね。そのためにも「ゆとり」が必要。だからこそ家族だけでなくできるだけ多くの地域の人が、広く、参加していく助け合いの輪が望まれるというわけだ。
若い頃の性格が年を取るとさらに際立つ?
しかしもちろん、高齢者だからといってすべての人が「頑固」「わがまま」になるわけでもないだろう。「本当にやさしくて、温かい方でした」と先日周囲から惜しまれつつ亡くなられた九七歳のある女性がいた。みなさんの周りにもそうしたすてきな高齢者の方々は数多くいらっしゃるはずだ。年を取って偏屈になるとは、どういう場合なのだろう。今度は、数々の実態調査を行っている東京都老人総合研究所に出向いてみた。
ここでは、六〇〜九六歳の健康な人を対象に性格テストを二年ごとに行い、一〇年間の追跡調査(!)をした結果を知ることができた。その結果、年を取ったからといって「頑固な人が増える」といった調査結果は得られなかったという。年を取って頑固になる人とならない人の違いを調べてみると、頑固になる人は痴呆がどんどん進んでいくのと一致していた。要はこの調査によれば「痴呆という病気が性格を変えた」のであって、加齢自体が性格を変化させたわけではないのだ。