日本財団 図書館


3] 記憶力と学習能力の変化

物覚えも悪くなるから体験しても学習が成立しない。つまり行動に変化が起きないから二〇年前、三〇年前の行動をくり返してしまう。新しい考え方や手法を受け入れなければならなくなると、イライラしたり、臆病になり、背を向けてしまうことも。

4] 限られた人間関係と行動範囲

若い頃からの人間関係が崩壊していく反面、新しく人間関係を広げることが困難。また、若い頃は五分で行けたところが二〇分かかる、あるいは外出する際の交通費や交通手段など、物理的に動き回れる範囲が狭くなる。付き合いや行動範囲が狭くなると、必然的に考え方の多様性が狭まる。

 

ゴッチャルト・テストにおける年齢別の正答率

 

021-1.gif

 

井上勝也、長嶋紀一編『老年心理学』(朝倉書店)より

 

改めてこうしてまとめてみると、高齢化に伴うさまざまな要因が一見高齢者を「わがまま」に見せてしまう一面があるように思う。となれば若い世代や周囲の理解度が、高齢者の気持ちを左右するということにもなる。

「接する側のゆとりが問題でもあるんです」とは前出のAさん。「介護などでも、人数が少なかったり、時間的な余裕がないことが大きな問題」でもあるからだ。だから周囲の効率優先で、高齢者に対して『こうしてくれればいい』と勝手な期待をしてしまうようになる。サポートする側も、期待した行動や態度からはずれて自分の思うとおりにいかないと、逆にそれを「わがまま」と思ってしまう。あるいは長年の経験や生き方か

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION