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長嶋教授は「老年期には、思考や行動が目先のことに捕らわれて、視点の転換ができにくいという『硬さ』が増加する」と語る。他人の意見などを受け入れることがむずかしくなり、周りの人に「わがまま」「頑固」になったとみられがちになるというわけだ。

ここでひとつテストを教えてくれた。次ページの表において、左の図形と同じ型を右の各図形の中に見つけるもので、ゴッチャルト・テストといわれる。これは複雑な図形の中から簡単な図形を見つけ出すもので、余分な線を頭の中で取り払い、必要な線だけでその図形を再構成しなければならない。つまり、視点を変えてみることが必要になる。「硬さ」とは、この思考の柔軟性が欠如した状態であるという。

このテストを二〇〜七九歳の人に行った結果、課題(図形)が困難(複雑)になるほど加齢とともに正答率が低下するという(グラフ参照)。

さて、あなたの「硬さ」はどうだろうか。チャレンジしてみてください。思考の柔軟性がわかるかも!?ちなみにわが鬼編集長は「やった、三分一八秒ヨ!」とすごく自慢げ。でもね、若い二〇代なら一分もかからずにできたりするんですよ…。ただまあ確かに年齢が上がるごとにむずかしいのか、若者は一問三〇〜九〇秒ほどで次々にこなしていくが、高齢になると時間をかけても全然できない場合もあるという。でもみなさん、万一わからなくてもあまり悩み過ぎないでくださいね。

さて、では年を取るとなぜ思考の柔軟性に欠けるのか。調査の状況をまとめてみた。

1] 五感変化

年を取ると五感の働きが低下(たとえば七〇歳だと聴力は軽度の難聴状態)→普段の会話や社会の変化を的確に捉えることが困難→誤解や考え違いが発生。

2] 生活環境が狭くなる(情報の取捨選択が下手になる)

さらに知覚機能や認知機能など心身の機能低下や病気への不安→内部(自分)に関心が行きがち→外の情報への関心が薄れ、的確に反応することが困難。そのため、誤った受け止め方や処理しきれないことが多くなり、イライラが募る。ときにはすべての情報を拒絶してしまうようになる。

 

 

 

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