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高齢者の一見矛盾した言動にも理由はある

「心にゆとりがあるときでないと、お年寄りと付き合うのはむずかしい」と語るのは、特別養護老人ホーム(特養)で調査のかたわら、ボランティアで話し相手などもしているAさん。イヤなものはイヤと顔や態度に出す痴呆の場合と違い、"正常老化"の高齢者は接し方に気をつかい、むしろストレスが溜まるという。

ある特養に出向いた時、そこに暮らす高齢者Bさんが、「今度買い物に行きたいねえ」とAさんに打ち明けた。そこでAさんは数日後買い物に誘おうとしたが、なぜか目も合わさず、明らかに避けている様子。「自分で行きたいといっていたのに…」といぶかしく思ったAさんだったが、しばらくしてよくよく話を聞いて納得した。行きたいといった気持ちはウソではなかったが、一方で気力・体力ともに衰えを自覚しているBさん、誘われても本当に行けるのか、誘われたら断れないしどうしようと不安になってしまったのだ。「誘うことより、その日の気分や体調をまず気遣うのが先でしたね」と苦笑する。

相手の真意がわかればなるほどと思えても、なかなか大人同士、素直な気持ちをさらし合うのはむずかしい。「行きたいけど、行きたくない」-この一見矛盾した心情も、Bさんなりの理由がある。

 

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年を取ると思考の柔軟性に欠けてくる…

では、実際、人の心理的な不安や行動は、老化とどう関係しているのか。それならその道の専門家に聞くのが一番。日本大学文理学部の長嶋紀一教授のもとにお邪魔した。

 

 

 

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