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例えば、子どもを幼稚園か保育園かのどちらに通わせるのがよいのか、迷っている親から

「夫は『幼稚園の方が小学校に行ってからよいから』と言うが、保育園に行かせて働きたい気持がある。実際に近くにある保育園を見学したが、よい印象をもった。子どもにとってどちらがよいのか」

という相談を受けた者が、即座に「保育園のほうが、あなたにとってもお子さんにとっても、きっといいと思いますよ、ぜひそうしてみては」と応えたそうです。

この場合、相談員は保育園の経験が長く、保育園の生活のほうが子どもの成長と発達にとって望ましいと思っていたため、その考えを相談の結論として押しつけたかたちになっています。

こうした対応では、おそらく依頼者は心から納得しないでしょう。また、例え納得して保育園に通わせるにしても、何か保育園であった場合には、「やはり幼稚園の方がよかったのでは」と考えないともかぎりません。

結論が先にあるような相談の助言はややもすると経験とともに増えてきますが、だからと言って十分依頼者の話も聞かずに結論を言って、それを押しつけるようなやり方はよくありません。このケースでは、まず近くにある幼稚園や保育園の様子についてできるだけ客観的に伝えるように、例えば、それぞれの保育内容や保育時間、環境などをわかりやすく話して、判断の材料にしてもらうことが、相談に対する助言となります。したがってその結論は、依頼者が決めればよいことになります。ここでは相談員はあくまで幼稚園か保育園のどちらかを選択できるような情報を提供することや、相談の場面が保育園であることから、その様子を直に感じてもらうようにすることなどに限られます。

 

 

 

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