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そのことで保育園に相談に来た母親は、自分の子どもの「かむ」という行為についてではなく、その母親の電話での対応が気にいらなかったと、散々悪口をいって帰宅したそうです。もちろんこれでは相談にはなりません。ここではその母親を問題にする前に、この相談を受けた相談員の対応について考える必要があります。まず母親に対しては、子どもが他の子をかむという問題行動について母親に話し、その背景や原因について一緒に考えていこうとする基本的取り組みがみられません。さらに相手の悪口を言う母親を解決に向けて導くことができず、結果としてただその悪口を聞いていたに過ぎないところに相談員として問題があります。それでは問題の解決を遅らせるだけでなく、相談員が依頼者と一緒になって第三者の悪口や陰口をしていたとも取られかねません。こうしたケースで、相談を受ける者が心しなければならない点としては、相談のなかで出てくる第三者、例えば、他の子どもやその親などについて依頼者がどう言おうと、絶対に賛同しないことです。また、それを黙っていつまでも聞いているのもよくありません。そうした話になった場合は、一応その話を受け入れながら、話の本筋に戻すように常に注意を払うということです。これはやさしいようで実際の相談では難しいかもしれません。ですから相手の性格やそのときの表情をよく観察しながら、対応する必要があります。

このように、相談を受ける場合は相手の話を十分に聞くことから始まりますが、その際に話の核心がずれて、直接関係のない他者への悪口や陰口にならないようにその方向づけをすることも相談員の重要な役割と言えます。さらに、こうした依頼者に対して注意したい点としては、他言だけでなく、他の保育園について悪くいったりすることがよくあるということです。逆に言うと、他の場所に行っても同じようなことを言ってないとも限りません。

したがって相談に来る依頼者に対してはそれが誰であっても、依頼者と一緒になって他者や他の保育園などを悪く言ったり、陰口を言わないようにすべきです。軽い冗談と思って話したことが、後で取り返しのつかないことにならないように、十分に気をつけたいものです。そのためにも、相談員は普段からこうした点に留意した対応が求められています。

 

 

 

 

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