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そのため、子どもが父親の顔色を見るようになり、不安そうで怯えている様子で、どうしたらよいのかわかりません」という相談に対し、

「もう一度よく話し合うことです。それが一番ですよ」といった型どおりのアドバイスでは、依頼者は納得できません。この場合、まず夫(父親)がどうしてそうした態度をとるようになったのかを考える必要があります。その原因が明らかになれば、そこから解決に向けての具体的な相談が進められるからです。もちろん、夫婦で「よく話し合うこと」は前提になりますが、そのときの具体的な内容や進め方についてわかりやすく話してあげることにより、依頼者の理解を図ることができるのではないでしょうか。

また、こうした場合大切なこととして、依頼者に対するアドバイスは実際に取り組める、より現実的な方法に限ります。依頼者の話をよく聞き、必要に応じて他の専門機関、例えば医療機関を紹介するケースがありますが、そのようなときにおいても機械的に「できるだけ大きな病院に行って相談してみては」では不十分です。その依頼者が抱えている問題を解決できる専門のところで、実際に相談に行ける距離にある付近の病院や保健所をいくつか教えるなどの配慮が必要です。そのためにも、相談員は常日頃から地域にある関連機関の存在やその役割・機能を把握し、必要に応じて連絡がとれるようにしておくことが望ましいでしょう。

いずれにしても、相談を通しての助言は依頼者自身が「できる」ことから取り組めるような、またできるだけ依頼者の生活に沿った内容を示してあげることが解決を早める方法になります。依頼者に到底できない、あるいは現実的でない形式的な助言は、それがどんなにすばらしい助言であってもかえって混乱を招くということを相談員は知るべきではないでしょうか。

そのためにも、相談員は相談を進めていくなかで依頼者の話をよく聞いて、その人の生活状況や家族関係、仕事の有無や内容など、必要最低限のことからは知っておくようにします。ただし、それが単なる興味本位であってはならないことは言うまでもありません。

 

 

 

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