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C 保育園の子育て相談の実際

 

(1) 依頼者を尊重する姿勢で

子どもを育てる過程には、多くのわからないことや未経験による不安がつきものです。そんな育児上の悩みや不安を抱えて相談に来る依頼者のなかには、相談員の側から見ると、時として身勝手とも思えることばや行動を感じることがあります。それは「どうしていいのかわからない」といったせっぱ詰まった状況にあるからです。相談を受ける者は、まずそういった依頼者の状況を十分理解する必要があります。さらに相談に来る依頼者一人ひとりにはそれぞれの生き方や考え方、生活経験があって「現在の人となり」をかたちづくっています。ですから、現在どのような状況を抱えている依頼者であっても、その人を全面的に受け入れるという尊重する姿勢が相談を受ける者すべてに求められます。

それは、実際に相談を進めていくなかでもこうした姿勢は忘れてはならない点です。子どもがオムツがとれないで悩んでいた母親に、相談を受けた保母がこれまで何度も聞かされていた内容であったため「もっとちゃんとしないといつまでもできませんよ」とつい言ってしまい、後になって「もう少し話を聞いてあげて、できることから始めるように伝えればよかった」と言った話があります。これは、相談に来た依頼者の立場を尊重しているとは言えません。よく相手の話を聞こうとする相談上の最も基本的な姿勢が足りないだけでなく、さまざまな背景をもつ母親の悩みについて真剣に受け入れようとする、言い換えると「尊重した」対応に欠けていたと思われます。これでは、相談を依頼した母親が自ら納得することはできないでしょう。

 

 

 

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