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しかしながら、専門の相談機関と形態面で異なるとは言っても、保育園における育児相談には相談をする依頼者にとってメリットがいくつかあります。

まず、保育園での相談は、あくまで育児に関する内容が主になりますから、特定の相談のための部屋や専用の電話が絶対に必要であるとは限りません。むしろ、保育園というオープンな空間を生かした多様な相談ができることが大きな特長になっています。例えば、相談の日時や場所を決めずにできる相談(園庭開放や送り迎えの時など)は依頼者にとって極めて便利で、利用しやすい保育園ならではの相談と言えます。保育園の送り迎えというわずかな時間を利用して、子どもの問題を相談した母親は次のように述べています。

「2歳を過ぎてから、少しも言うことをきかない子どものことで悩んでいた時、たまたま保育室にいらした園長先生にそのことを話すと『2歳から3歳を迎える子どもは自我が芽生えて、言うことをきかないのが普通で成長の印よ。もうしばらく様子を見たら』といわれ少し安心しました。その日、同じ年齢の子どもがいるクラスを見せてもらい、改めてそのことがわかり、悩んでいた気持ちが楽になりました」

児童相談所のような専門の相談機関とは異なり、保育園の多くは相談の定めの特別な環境や設備を設けているところは、それほど多くはありませんが、反対に、園長先生はじめ保育園の職員による相談員が身近にいるため、比較的気軽に相談ができる点が保育園での相談のメリットであって、この母親のことばがそれを語っています。ですから、保育園では、その特性を生かした相談のための環境づくりをしなくてはなりませんが、専門の相談機関と同じような設備や人的配置を用意する必要はありません。むしろこれまでの保育を通じて蓄積された育児に関する知識や方法を、保育園という場を利用して、かたちにこだわらず、あくまで依頼者の相談に応えていくための柔軟な対応をとるようにすることが大切になります。

言い換えると、それが保育園における育児相談の特性であり利点であるからです。

 

 

 

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