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言い換えると、さまざまな状況や背景をもって相談に来る依頼者を受容し、先入観や偏見を持たず、依頼者の相談を受け入れる姿勢が相談員には求められます。

「普段からあまり評判がよくないAさんから相談を持ちかけられたが、よくほかの保母と言い合っている場面を見ていたので、嫌な感じがしたが、その相談に応じることにした。案の定、はじめはできるだけ依頼者のAさんの話を聞くように努めたが、思うように進まず、時間だけが過ぎてしまった」

これは保育園に子どもを通わせている母親のAさんから相談を受けた相談員(主任保母)の話です。ここでは、母親から話を十分聞こうとしていますが、相談の核心までに至らずに終っています。この相談員はこのケースを振り返って「Aさんに対する先入観が強く、話を聞こうとしても心の片隅にAさんへの嫌悪感が残って、十分な対応ができませんでした」と語っています。こうした場合、相談員だけでなく、依頼者のAさんの方にも恐らくその雰囲気が感じとられていたことが想像されます。そのため、Aさんは「自分の話を十分聞いてくれない」と思い、依頼者と相談員の間に不信感が生まれ、結局相談にならなくなったとも考えられます。

このように、依頼者から相談を受けるにあたっては、依頼者に対する先入観や感情が、時として相談の妨げになる場合があります。例え、相談員からみて好ましくない、または周囲の人々の評判がよくない「問題のある」依頼者であっても、相談を受ける際にはそういったこともすべて受け入れ、そこから相談をスタートさせることが求められます。相談はまず相談の相手を全面的に受け入れることによって、はじめて依頼者は安心して心を開くものです。相互の率直なかかわりができると、依頼者の育児への悩みや不安のほとんどは解決に向かっていくと言われます。

依頼者の存在を「ありのまま」に受け入れ、話に耳を傾ける基本的姿勢など、初期対応の大切さを相談員は常に意識する必要があります。

 

 

 

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