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シート93

 

「さすが係長」の手引き

 

1 担当者の対応について

 

公務がいったん決めた事項について、住民から何とかならないかという要望がよく出されることがあります。そうした要望に対しては、応えられることもあれば、応えられないこともあるでしょうが、いずれにしろ、担当者がどのような態度で住民に接するかにより、その決定に対する納得、公務への信頼が決まります。

このケースについて、定員がいかなる必要性から設定されたかは定かではありませんが、数人であれば定員をオーバーしても物理的には差し支えないかもしれません。しかし、いったん定員オーバーを認めてしまうと、きりがなくなる可能性もあり、定員で打ち切ることは止むを得ないと言えましょう。

問題だと思われるのは、住民の要望を拒否するときの担当者の態度です。定員だからと機械的に冷たい態度で拒否されたり、大声で反論されれば、住民が気分を害し、公務に対し反感・不信感を抱くのは無理もありません。ここは、なぜ定員を超えることができないのかを丁寧に説明し(たとえば、会場の座席数など)、辞退する人が出れば、連絡しますなどとして、住民の納得が得られるように暖かい態度で対応すべきだったでしょう。

次に、出席予定者を住民同士で差し替えたことに対する手続については、より柔軟な対応が可能であったと考えられます。なぜ欠席手続をそのグループから直接出してもらわなければならないのか、その必要性が定かではありません。要するに、欠席することを確認するという趣旨でしょうから、担当者からそのグループの責任者に電話して欠席の意図を確認することも可能だったでしょう。また、講演会当日、もし、欠席するはずの住民が出席して、定員を超え、物理的に支障を生じてしまうような場合には、新たな参加申込者に対しては遠慮してもらうなどの措置を取るかも知れないことを告げた上で、参加申込を受け付けることも可能だったと考えられます。

 

2 係長の対応について

 

欠席者の代わりに、参加申込みを認めたこと自体は、適切な措置だったと思われますが、担当がいったん拒否した要望を係長が認めたという過程については、問題なしとしません。いったん拒否されても、その上司に掛け合えば何とかなるという印象を与えては、公務の信頼性など醸成されるはずがありません。

こうした企画を行う場合には、このケースのような事態が生じることが予想されるわけですから、予めどう対処するかについて、係全体で検討し、対応する者の役職や、担当者によって対応が異なることのないように、対応方針を全員に徹底させることが、係長の責務であったといえます。担当者が拒否した条件を、住民が困っているからと、自らの裁量でくつがえすことにより、係長としての存在意義を示す、そんな考えだったとしたら、役職者の役割を理解していないと言わざるを得ません。

 

 

 

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