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マレーシアにおけるサービス向上の試み
マレーシアでは、経済発展のためには効率的な行政運営が不可欠であるとの認識の下、1980年代後半から様々な行政改革の取り組みを行っています。それらには、人件費の抑制を目指した定員削減や公務員制度の再構築といった政策に加え、国民に対し、より質の高い行政サービスを提供するための試みが数多く含まれています。ここではそうした試みのうち、顧客憲章とISO9000の導入について紹介しましょう。
1 顧客憲章(Client Charter)
顧客憲章は、国民に対して高品質の行政サービスを提供することを目指して、1993年に導入されました。各行政機関は、それぞれの所掌業務について、行政サービスの受け手(顧客)、種類、質・量等を、憲章という形で明記することが義務付けられました。
たとえば、業者に対して免許の発行を行う行政機関では、
顧客:免許を受けようとしている者及び既に免許を受けた者
サービスの種類:免許の種類及び各免許の発行、更新、取消等
サービスの質・量:免許の発行数や申請から発行までに要する期間等
といった内容を憲章で規定します。
憲章は役所の窓口や会議室に、顧客に見えるように掲示しなければなりません。また、モニタリングのために、各機関に監査委員会を設置したり、顧客からの苦情窓口を設けたりして、行政サービスが憲章の規定通りに行われているかどうかをチェックしています。
顧客憲章は、1996年現在で402の政府機関に設けられています。
2 ISO9000の公務への導入
マレーシア政府は1996年に、行政サービスについての品質管理システムを確立し、国民により高品質の行政サービスを提供することを目的として、西暦2000年までに全ての行政機関にISO9000規格の取得を義務づける決定を行いました。
マレーシア政府では、実施に向けて以下のようなプロセスで、準備を進めています。
(1)宣伝・啓蒙活動
1996年に「公務におけるISO9000の実施について」と題するガイドラインを発表し、各行政機関に配布した。
(2)各行政機関に対する研修の実施
各機関の幹部職員及び中堅管理者を対象に、1日コースの説明会を開催するとともに、ISO9000の実施を実際に担当する職員を対象とした技術研修も実施している。
(3)コンサルタントと審査体制の充実
行政改革、行政サービスの向上を所管する総理府行政近代化局にISO9000部を設置し、各行政機関に対するコンサルタント業務及び審査業務の実施体制の整備を進めている。