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倫理観とグローバリゼーンョン

 

倫理観は、一人ひとりの公務員の価値観、行動様式などと結びついています。そして、各公務員の価値観は、その国の歴史、文化、社会情勢や、その人の生活環境などに影響されます。各国の歴史・文化、各公務員を取り巻く環境などは異なっているため、各人の価値観、各国の倫理観は異なり、当然、各国の倫理規定も異なっていると考えがちです。しかし、実際には、各国の倫理規定は類似しており、また、倫理は、ますますグローバル化せざるを得ない傾向にあります。

 

1 倫理規定の類似性

 

各国の倫理規定を見てみると、その類似性に気づきます。収賄などの汚職は当然のことながら禁止されているし、秘密情報の漏洩禁止、私的利益と職務遂行との利害相反防止、法令や上司の命令に対する遵守義務などが、定められています。

このように国が異なっても倫理規定が類似しているのは、公務の特質である、公共の利益の追求、公務の公正性・中立性などを確保するためには、その国の社会情勢の相違にかかわらず、こうした倫理規範を求めざるを得ないためと考えられます。

 

2 倫理のグローバル化

 

近年、多くの企業が、国境を越えて経済活動を展開しており、それらの企業は、どの国で活動を行うかにかかわらず、共通の倫理基準を自らの企業活動に課しています。こうした企業は、公務員の汚職・腐敗を不要な経済コストと考え、各国に腐敗の一掃を要求します。また、いかなる国においても同じルールの下で経済活動を展開できた方が効率的なため、経済活動のグローバル化は、各国に同様の倫理基準を要求するようになります。

各国政府とも、このような企業の要求に応えなければ、その国での経済活動は低下し、果ては国際的信用を損なうおそれがあるため、最も高い倫理基準に沿って、汚職・腐敗の防止や、企業の秘密情報の慎重な取扱いなどに真剣に取り組まざるを得ないのです。

ところで、類似の倫理規定を有しているにもかかわらず、各国の倫理の実態には較差があります。それは、類似の倫理規定はあっても、その遵守度に相違があるためです。しかし、倫理基準と実態が異なるという状況は、その国の公務運営能力の未熟さの表れであり、各国とも、政府の信頼度、国際的な信用を高めるには、実態を基準に合致させる方向で、このような乖離を是正せざるを得ません。

 

3 グローバル化の例

 

最近の倫理に関するグローバル化の動きとしては、次のようなものがあげられます。

・OECD加盟国は、1997年11月に、外国公務員に対する贈賄を禁止する「国際商取引における外国公務員に対する贈賄防止協定」の採択に合意し、各国は、同協定の締結を目指しています。協定の内容は、各国が外国公務員に対する自国の企業等による贈賄行為に対し、自国の法律により刑事罰を科すというものです。こうした協定採択の背景には、それまで外国公務員に対する贈賄に刑事罰を科していた加盟国は、アメリカだけであったため、外国での贈賄行為が可能な他国の企業と比較して、アメリカ企業が不利になるとする、アメリカ政府の意向があったと言われています。

 

 

 

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