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シート80

 

倫理観を高めるための4つのアプローチ

 

汚職の防止、倫理観の高揚には、様々な方策がありますが、大別すると次の4つのアプローチがあります。職場の状況などに応じて、最も適切な手法を取ることが必要です。

 

1 禁止アプローチ

 

職員に対する禁止行為を法令・規則等により定め、通常、罰則により担保して、遵守させる方法です。服務規程などがその代表例です。

この手法では、禁止する行為を文章により規定する必要がありますが、その規定を杓子定規に解釈し、禁止規定の背景にある精神を理解せず、脱法行為を行う職員が現れることがあります。それを防ぐために、さらに事細かに禁止規定を定めると、職員の行動を消極的にさせるおそれがあり、活気のない職場になる可能性があります。

 

2 損得アプローチ

 

汚職は経済的に割に合わないことを職員に理解させる手法です。汚職により生じる金銭的、社会的、精神的損失と比較して、汚職により得る賄賂などの利益がいかに小さいかを認識させるため、汚職発覚の実例、汚職の末路を示す方法がこのアプローチに属します。

この手法は、合理的な人間は、損得勘定で行動するという考え方に基づいていて、そのポイントは、損失の大きさを理解させるとともに、汚職はいずれ発覚する確率が高いことを認識させる点にあります。

 

3 システム・アプローチ

 

汚職が起こりにくいような業務運営方法、勤務環境を整備する手法です。たとえば、契約担当職員を定期的に異動させたり、許認可などを単独で処理させない、業務の処理を監視・チェックするシステムを設けるなどの措置がこの手法としてあげられます。

汚職の原因を追究してみると、業務処理方法を見直すことにより防ぐことができるケースが少なくありません。職員が汚職の誘惑に駆られる機会を減らし、個々の職員の倫理観のみに依存しないよう、汚職防止システムを構築することが重要です。

 

4 積極アプローチ

 

このアプローチは、他の手法とは異なり、汚職防止を直接の目的とするものではなく、職員に国民への献身、サービス向上などの行為を奨励することにより、職員の士気を高め、結果として汚職に陥りにくい職場風土を構築する手法です。

この手法では、どのような行為が国民へのサービス向上につながるかの判断は、個々の職員に任すことになり、結果として、創意工夫に富み、自律した職員の育成効果も期待できます。

 

 

 

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