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シート77

 

「割り勘で一杯」の手引き

 

このケースについて、荒井係長と松田君の行動の問題点を時系列的にあげてみましょう。

 

・業者の前で、食事に行く話をしたこと

公務に取り入ろうとしている業者は、その機会をねらっています。業者の前で、食事に行きたいが、どこかいい店はないかと話をすることは、業者につけいる絶好の機会を与えたに等しいと言えます。

 

・割り勘であればと業者と一緒に食事に行ったこと

別に業者に便宜を図ってやるわけではないし、割り勘なら一緒に食事をしても何の問題もないのではないか。勤務終了後のことだし、そこまで公務員の私生活を縛ることはどうかという議論もあろう。しかし、公務の信頼を得るには、実際に腐敗などの問題があるかどうかではなく、公務が公正・中立に職務を遂行していると国民に見えることが大切なのです。

担当者と業者が、仕事とは関係ない場所で、飲食を共にしていれば、実際に不正があったか否かにかかわらず、国民には、公務とその業者は癒着していると見えるのです。特に、部下を指導する責任がある係長がこのような姿勢では、高い倫理観を有する部下が育成される可能性は薄いでしょう。

 

・業者から土産をもらったこと

実際にその土産が、そのお店からのものなのか、業者の計らいによるものなのかは定かではありませんが、ちょっとした土産などをきっかけとして業者は担当者に接近を図ろうとするのです。

 

・業者の息のかかったお店に再度行ったこと

どこのお店に行こうと自由ではないか、そこまで拘束するのはどうかと思うかも知れません。しかし、明らかに業者と近い関係にあるお店に行けば、お店から差し入れされるかも知れませんし、担当者がそのお店に頻繁に行くことにより、業者とは一緒でなくても、国民には担当者と業者は癒着していると見えるかも知れません。

公務の信頼を高めるには、法令で禁止されていることを遵守するだけでは不十分で、一人ひとりの公務員が、どうすれば公務の信頼を勝ち取れるか、又は信頼を損なわないかを考えて行動する必要があります。

 

・お店で業者に会っても、そのまま飲食を続けたこと

業者に会った時点で、差し入れなどの便宜を受ける可能性が高まり、また、回りから担当者と業者の癒着があると見られる可能性がさらに高まったわけですから、その時点でお店を出るべきだったと言えます。

 

 

 

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