日本財団 図書館


シート70

 

部下の参加

 

1 部下の参加の否定

 

組織にあっては、目標や組織活動の規模が個人の場合に比べて格段に大きく、活動がもたらす影響も大きいことから、ややもすると監督者は、失敗することをおそれ、部下の新たなアイデアや工夫の余地をせばめたり、決定過程への部下の参加を否定してしまう傾向があります。たとえば、監督者として、次のように考えたことはないでしょうか。

○ 部下は黙って上司の指示に従え。

○ 考えるのは責任者である自分だけでいい。

○ 仕事の進め方にくちばしを入れてくる部下は気に入らない。

○ 自分よりよいアイデアを出す部下は生意気だ。

○ あの部下は、自分の言うとおりに「はい、はい」と言う素直なよい部下だ。

○ 責任のない部下の考えは自由奔放で使いものにならない。

○ 部下に意見は言わせるが、決定権は自分にある。

○ 自分も部下だったときは、言いたいことを言わずに我慢をしてきたんだ。

 

2 参加と当事者意識

 

人は、自分が参加して決定した事柄に対しては、自分自身の決定だという当事者意識が働きます。一方、他人が決定した事柄については、その実施を命令されても、どこか無関心になりがちなものです。したがって、目標案や計画案を考える場合には、部下を参加させて一緒になって検討し、最も良いと思われるものを決定すれば、目標達成や計画実行に対する部下の意欲が高まり、職場の士気の高揚を図ることができます。

この場合に注意することは、目標や計画を立てる際に、形式的に部下を参加させただけでは、部下の参加意欲は起きないという点です。参加意欲をかき立てるには、目標や計画を立てる段階から、仕事が完了するまでの間、部下を実質的に参加させる必要があります。

部下を実質的に参加させるためには、たとえば監督者は、下記の点を念頭におく必要があります。

・形式的な参加ではなく自発的に目標案や計画案を考えるように努めさせる。

・努力して初めて達成可能な程度の困難性のある計画案を考えさせる。

・担当者に、細部の実施方針を決定する自由と、実施に際しての自由裁量の余地を与える。

・実施の段階における細部の方針、方法などや、さらに実施後の仕事の成果について、実施担当者自身に自己評価をさせ、監督者はその結果について担当者と話し合い、必要な指導を行う。

・部下に窮屈な感じを与えないように、実情把握や調整の行き過ぎに注意する一方、部下の不安を取り除くため、適宜アドバイスなどをする。

・部下が自ら「仕事の自己管理」を行えるように、権限委譲などの工夫をする。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION