シート65
権限委譲
1 権限委譲の効果
権限委譲とは、上司が自分の持っている仕事に関する権限を部下に委譲し、部下にやらせてみることで部下の能力の開発を図る方法です。権限委譲により、部下の能力が開発されるほかに、次のような効果が生まれます。
・出張や病気で管理者が職場を不在にしても仕事が滞らない。
・管理者に時間のゆとりが生まれて、ほかの重要な仕事に専念できる。
・管理者の仕事という重要な仕事をゆだねてくれたということで、部下が管理者の信頼を実感し、よりよい人間関係が生まれる。
2 権限委譲の留意点
上司が自分の権限を部下に委譲する際には、次の点に注意して行う必要があります。
○ 部下の能力などに応じて委譲する
部下の能力や意欲を勘案して行わないと失敗する危険性が高まり、失敗した場合には部下が自信ややる気を失うことになります。
○ 部下の育成という観点から行う
単に管理者が忙しいからといった理由で権限を委譲すると、部下は管理者の仕事を押しつけられたという気持ちを抱きかねません。部下を育成するという観点を持って行うことが大切です。
○ 責任を回避しない
権限を部下に委譲しても上司の責任は回避できません。部下が仕事の達成に失敗した場合には、管理者は自分の責任として前面に立つことが大切です。
○ 功績は譲る
これに対して、仕事の達成に成功した場合には、管理者が功績を奪ってはいけません。部下の功績として、部下を前面に立てることが大切です。
○ 細かく指示しない
上司が細かく指示したのでは、権限を委譲したことにはなりません。単に手足として部下を使っているだけになります。権限を委譲した以上、部下の自主性を尊重し、大まかな指示や示唆にとどめることが大切です。
○ 失敗しないように見守る
権限を委譲しても、仕事の達成に部下が失敗すると自信を失い、かえって能力開発を阻害することにもなりかねません。失敗しないように注意深く見守り、必要な支援をすることが大切です。