日本財団 図書館


そもそも、部下は監督者の気づかないいろいろな点に苦情や意見を持ち、それを誰かに聞いてもらいたいと思っています。監督者は、このような苦情や意見に対しては、よい聞き手でなければなりません。もし、苦情や意見が、まったく監督者に持ち込まれないようであるならば、その職場の監督者と部下との間は決してうまくいっているとは言えません。互いに信頼関係がなく、風通しが悪い職場では、部下の育成が円滑に進むはずがありません。

管理者は部下と話す機会をなるべく多く作って、部下の指導・育成に役立てることが大切ですが、その際には次のようなことに注意する必要があります。

○ 部下が何でも率直に話せるような、なごやかな雰囲気を作る。

監督者自身が日常何事によらず部下に知らせるべきことは知らせ、相談ごとには応じるなど、できるだけ話し合う機会を多く作ることです。これによって部下は、監督者に対して親しみと信頼を深めるでしょう。

○ 話をするきっかけを探したり、作ったりして、話をする機会を多く作る。

上司は、部下にとって一目おく存在です。まして、内気な部下は思っていることをなかなか打ち明けられません。部下と接触する機会を積極的に作って話し合うようにしましょう。ただし、管理者が話しかけるときには、部下の仕事の状況などを勘案して、最もいいタイミングを図る必要があります。

○ 部下の苦情や相談に対しては、いつでも真剣に耳を傾ける。

忙しい、面倒だからなどと、いいかげんに聞き流すようなことは禁物です。何事によらず、親身になって部下の問題解決に助力することが大切です。自分の意見を述べる機会が与えられ、その意見が十分に考慮されていると感じたならば、たとえ意見どおりの決定に至らなくても、部下は気持ちが楽になり、上司への信頼感が増すものです。

○ 部下の価値観などを尊重し、否定しない。

上司と部下で価値観が異なることはよくあります。価値観の相違が意見の違いを生むこともあるでしょう。しかし、様々な人間が働く職場では、価値観の相違は避けられませんし、意見の相違がいろいろなアイデアを生み、活気のある職場をもたらすのです。部下の価値観を尊重しつつ、意見を交わし、よりよい業務遂行に結びつけることが監督者の役割です。決して、異なる価値観を有する部下を否定したり、意見の異なる部下を遠ざけたりしてはいけません。そうした上司はその部下の信頼を失うだけでなく、他の部下の信頼も失うでしょう。

○ 管理者が話をしすぎないように注意する。

「自分はよく部下と話す機会を持っている」という上司を見てみると、実際には自分ばかりが話していて、部下の話を聞いていない上司が少なくないようです。部下の話は要領を得ず、自分が話した方が効率的だと考えている上司もいるようですが、こうした見せかけの会話では、部下は上司の意見を押し付けられていると感じるだけで、上司と部下の信頼関係が構築されるはずがありません。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION