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シート53

 

OJTのねらいと限界

 

1 OJTのねらい

 

なぜOJTを行うのでしょうか。最大のねらいは、現在、部下が担当している仕事を確実に処理できるようにするためです。しかし、OJTのねらいはこれだけにとどまりません。部下は将来管理者となり、組織を担っていく役割を背負っています。組織の将来を担う部下に対し、上司として指導・育成することが望まれます。

さらに、管理者は、組織の仕事から離れた、職業人としての生き方、社会人としての態度といったことについても相談に応じ、先輩として忠告するといった役割も期待されています。こうした勤務時間外の、または先輩としての指導・育成は管理者の仕事そのものではありません。それをしなかったからといって、管理者としての責務を果たしていないということにはなりません。しかし職場で一緒に仕事をするという関係を持った者として、部下を何とか育てようという意識があれば、上司が勤務時間外の場面でも部下を育成しようと努めることは自然であり、部下もこうした時間外の指導を受け入れてくれるでしょう。

 

2 OJTの阻害要因

 

OJTは、職員の能力開発の重要な手段で、新たに配属されてきた部下に仕事の進め方を教えたり、部下が作成した文書を修正したりするなど、上司であれば意識していなくても、部下を指導・育成しています。指導・育成しなければ仕事が円滑に進まなくなるからです。しかし、現実の職場において、上司が部下の指導・育成を効果的に行っているかというと疑問があります。

OJTが効果的に行えない原因は、上司、部下、さらに組織の三つの側面に求めることができます。

組織がOJTを阻害する場合としては、組織として職員の能力開発に関心がなかったり、勉強しようという雰囲気が職場にないことなどが考えられます。また、部下がOJTを阻害する場合としては、自己啓発をしようという意欲がなかったり、上司からの指導を嫌ったりすることが考えられます。

しかし、OJTが効果的に行われない理由の多くは上司に原因があります。OJTは、上司が中心となって部下に働きかけることから始まるものです。上司が働きかけなければ、また、上手に働きかけなければOJTは効果的に行えません。

上司が効果的なOJTの遂行を阻害している原因としては、次のような点が考えられます。

・OJTを効果的に行う方法がわからない。

・部下の気持ちや心理がわからない。

・仕事が変化して自信を持てない。

・部下を育てると自分の地位が危なくなる。

・能力開発は本人の努力で行うものと考えている。

 

3 管理者とOJT

 

確かに能力開発は本人の努力が大切です。自分の努力で能力を開発してきた管理者は部下にも同じことを求めがちです。

 

 

 

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