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3 井上班長への説得方法

 

人を説得しようとする場合、自分の意見と異なる相手の意見を一方的に排除しては反発を招き、効果的ではありません。まず相手の考え方をよく聴き、相手と共に考えるという姿勢が必要です。

しかし、本ケースの場合、説得の基礎となる人材育成観に大きな隔たりがあるため、短時間で完全に説得することは難しいかも知れません。人材育成観に踏み込まない現実的なレベルで説得する方がいいでしょう。たとえば、組織の第一目的は、仕事の的確かつ効率的な遂行であるという共通認識の下、企画班の仕事に支障が出ないような代案、たとえばその間、庶務班の人を応援に出し、組織的にカバーするなどの案を井上班長に示して円満に説得することが望まれます。

なお、久保田班長は、部の研修推進者の立場で、これまで各課に対し集合研修への派遣を強く要請してきたという経緯がありますが、そうした自己の立場を損ないたくないという姿勢から、井上班長を説得しようとすれば、相手の立場ではなく自分の利益を守るために説得するという感じが相手に伝わり、説得は効を奏さないでしょう。

場合によっては、課長に説得を依頼することも考えられます。しかし、田口課長は、組織の人材育成の重要性をあまり理解していないように思われます。小谷君の研修参加に対し、「井上君の了承がとれれば出してはどうか。」と反応したことにそのような姿勢が窺われます。したがって、井上班長を説得する際には、まず、課長に小谷君にとってのこの研修の重要性を理解してもらい、課全体で小谷君が研修で抜けた後の応援体制をどうするかについて相談しておくことが必要でしょう。

 

 

 

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