特別昇給は、特に優れた業績を残した者に報いるための報奨であり、特別昇給を順番に与えることは、その趣旨に反するものであることは言うまでもありません。
しかし、現実にこうしたことが起きているとしたら、それは、課員の能力・実績の差を特別昇給という形で明らかにしてしまうと、課内の融和が困難になると判断する監督者がいるからです。協同作業が多く、また、実績が明確に形となって表れにくい公務では、特にその傾向があると言えなくもありません。
・評定の裏付けとなる事実を把握していないこと
順番に特別昇給を与えるという方針を立てたためかも知れませんが、吉田課長は、勤務評定の具体的な裏付けとなる実績や事実をまったく把握していないようです。これでは、評定は感覚的なものにならざるを得ず、評定者・被評定者が互いに自分の考えを述べるだけで、実りある評定になるはずがありません。
・課員の顔色を見て評定していること
高圧的な秋山君にいろいろと言われると、いったんつけた評価を覆し、その埋め合わせを従順な土屋君の評定で行う。これでは、口うるさい者が得をし、おとなしい者が損をするだけです。こういう不合理がないように、現場に最も近い監督者が客観的、冷静に職員の実績、態度を評価することが勤務評定の目的なのです。
課員の反応にかかわらず、監督者は、具体的事実などを根拠に自信をもって評価し、その評価について部下と真剣に話し合って納得を得るとともに、さらに職務遂行に向けて動機づける、これが正しい勤務評定のあり方と言えます。
・翌年の評定について言質を与えていること
吉田課長にすれば、部下にやる気を出させるために翌年の特別昇給を約束したつもりかも知れませんが、これでは、勤務実績などに関係なく特別昇給が与えられることが明らかになり、仕事をしてもしなくても昇給できるという雰囲気が職場に蔓延します。職員が持たれあいながら、和気あいあいと過ごしているが、大した勤務実績は残していない、そのような職場になるおそれがあります。