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シート44

 

「今年は、我慢してくれ」の手引き

 

1 この組織の勤務評定のシステムについて

 

この勤務評定システムの詳細は不明ですが、下記のような問題があると考えられます。

・各項目評価を総合評価にする際のウエイトが決められていない

項目評価と総合評価の関係が明らかでない一方で、総合評価が昇給に直結しているため、項目評価に関係なく、まず、部下に特別昇給を与えるかどうかという判断が先行し、それに合わせて総合評価、続いて項目評価を決めることになりやすい。これでは、項目評価の意味がほとんどないと言っても過言ではない。

 

・昇給以外に評定結果がどのように利用されるか明確でない

その結果、昇給、特に特別昇給に関心が集中し、勤務評定の本来の目的であるはずの、職員の能力、適性を活かすための手段という側面が忘れ去られている。勤務評定の目的を各監督者に徹底する必要がある。

 

・監督者に対し、勤務評定についての研修を実施していない

監督者には、勤務評定の目的、内容、評定方法、評定面接の方法、評定結果の利用について研修を行う必要がある。他の業務であれば、上司や他の監督者の仕事ぶりなどを見たり、アドバイスを受けたりして、自分なりのスタイルであれ、望ましい業務遂行手法を身につけることができる。しかし、勤務評定の場合は、見えないところで行われるため、どのようにして評定したらいいか学習することが困難で、適切な評定とはかけ離れた形で、自己流の評定に陥りやすいと言える。特に、初めて勤務評定を行う新任の監督者には、勤務評定についての研修は不可欠と言えます。

 

2 吉田課長の評定について

 

吉田課長の評定ぶりについて、問題と思われる点としては次のような点があります。

・課員の過去の勤務評定を調べたこと

前任の原課長にどのように勤務評定をしたかを聞きにいき(勤務評定研修もなく、初めて評定者となる吉田課長としては無理からぬ行動とも言える)、果ては人事課にまで行って各課員の評定結果まで調べてきたことは(人事課が評定結果を吉田課長に教えたことも問題だが)、吉田課長は当初から自分で課員の能力、実績などを判断して評価することを放棄していたとも言えます。いずれにしろ、過去の勤務評定を知ることは、ややもするとその課員に対する先入観を生みやすく、自由で、客観的な評定が難しくなるおそれがあります。

 

・特別昇給を順番に与えるという方針を立てたこと

勤務評定は、職員の能力や適性を把握するためのもので、課員の能力・実績をありのままに評価するのでなければ、評定を実施する意味がありません。

 

 

 

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