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さらに、変化の方向を予測しにくいことも今日の特徴です。様々な情報が遍在し、新たな現象が生じ、人々が多様な価値観を有している状況下では、どのような方向に変化するかを予測することは、以前にも増して困難になっています。
この変化の激しい時代には、公務の安定性、慎重な公務遂行をある程度犠牲にしても、時機を失しない迅速さが必要になることがあります。状況が変化しているのに、現状を継続していると、変化の幅・スピードが大きい今日においては、取り返しがつかない結果を生み出しかねません。変化への対応は新しい措置を意味し、新しい方策には当然リスクを伴いますが、ある程度の不確実性は覚悟しつつ、決断することが重要になりつつあります。
4 自己主張と利害調整
近年、人々の自己主張の意識が高まってきたと言われています。たとえば、以前は政府の決定に不満がある国民は、これに不承不承従うか、これを無視するかであったのに対し、近年は、政府の政策に反対運動を起こしたり、政策立案に直接関与しようという国民が増えてきています。
一方、自己主張の高まりは、組織内にも変化をもたらします。たとえば、他者との軋轢を覚悟してでも自らの考えを実現したいと考える職員が増加し、いわゆる上司-部下の絶対的な服従関係は薄れつつあります。個人としての充足感が優先され、組織への帰属意識は衰退していきます。
上記のような状況では、相手の要望を踏まえた行政運営・組織運営が不可欠と言えます。そして、国民や組織構成員のすべての要望を満たすことは不可能ですから、いかに異なる要望・利害を調整するかが公務遂行にとって重要になります。
利害の調整にあたっては、利害関係者となるべく多く接触する機会を持ち、意見交換を繰り返しながら、次第に相互の意見のギャップを縮めていくことが必要です。そのため利害調整には多くの時間と労力を要しますが、そうした調整を避けて、玉虫色で、具体的な方策につながらない言葉だけの解決策を模索するだけでは、効果的な公務遂行の実現は困難でしょう。
なお、要望を踏まえて行政運営を行う際に留意しなければならないことは、自らの要望を表さない、いわゆるサイレント・マジョリティの存在です。自己主張の強い者、声の大きい者のみの意見を考慮することは、公益の実現につながらないおそれがあり、こうした声なき国民の要望をいかにくみ取るかが重要と言えます。