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シート30

 

今後の公務に求められる視点

 

現代の公務を取り巻く情勢は急速に変化していて、新たな情勢に合致した視点を持って公務を遂行することが、効果的・効率的な公務遂行の鍵になると考えられます。現代の公務を取り巻く特徴的な現象とそれらの現象に対し、行政としてどのような視点を有したらいいかについて考えてみましょう。

 

1 情報化と説明責任

 

現代は情報化の時代といわれ、大量の情報が至る所に遍在し、その質も千差万別です。情報化時代が到来したのは、情報の価値が認識され、技術の進歩とも相まって、情報の発信・受信がより容易になったためと言えます。情報化時代においては、情報をいかに収集・選別し、集めた情報を適切に分析し、よりよい判断に結びつけるかにより、公務の質・効率性が左右されると言えます。

また、情報化時代には、国民もマスコミなどを通じて情報を入手し、自らの意見を有しています。そして国民は、政府の活動の適否を自ら判断するため、政府の決定がどのような情報に基づき下されたのか、説明を求めるようになってきています。こうした国民の声に応え、政府は自らの決定の妥当性を具体的な情報に基づき国民に説明し、政府に対する国民の信頼を獲得することが求められています。

 

2 複雑化と協同意識

 

現代は、複雑化の時代といわれます。複雑化をもたらしている原因としては、新たな現象の出現も挙げられますが、科学の進歩に伴い、以前は解明できなかった現象を解明できるようになったことも一因と言えます。つまり、既存の現象をますます細分化して理解できるようになっているのです。

こうした細分化の進行は、その現象の理解・分析のために、職員の専門化をもたらします。そして、職員の高度の専門化・細分化は組織にセクショナリズムをもたらし、組織内の意思疎通・総合的な視野からの業務遂行の妨げになることがあります。今後とも細分化は必須の現象であり、意図的に組織内のコミュニケーションを図り、職員の協同意識を醸成しない限り、組織としての総合力を発揮することは困難になるでしょう。

 

3 変化と迅速性

 

情報化や細分化は必然的に変化をもたらします。今までと異なる情報が入れば、その情報に基づき取られる行動は、以前の行動とは異なるものになるでしょう。異なる現象が解明されれば、それだけ人々の選択肢が広がり、人々の行動パターンの変化、価値観の多様化をもたらすでしょう。

このような人々の行動・価値観の変化は、現代に特有の事態ではなく、昔から人々の価値観は変化してきましたが、現代を特徴づけているのは、その変化の速度が速いことです。つい最近まで当たり前であった状況が時代遅れになったり、今日通用する方策が数ヵ月後には効力を失うようなことがしばしば起こります。

 

 

 

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