日本財団 図書館


シー卜26

 

公務の生産性

 

近年、民間企業では、事務部門の生産性に関する議論が活発です。一方、業務の大部分が事務部門である公務では、あまり生産性に関する議論が行われていないようです。公務の生産性について考えてみましょう。

 

1 生産性の測定

 

生産性は、産出÷投入によって表すことができます。生産部門では、産出及び投入について、ある程度明確に把握・測定できるのに対し、事務部門では困難な面があるため、生産性にあまり注意が払われてこなかった傾向があります。

確かに、事務部門の生産性測定には困難を伴います。しかし、大切なことは、完璧に測定することではなく、測る価値があるものは不完全でも実際に測定し、測ることにより生産性に対する意識を向上させることです。

たとえば、生産性の一つに、労働時間の生産性があり、

労働時間生産性=成果+総労働時間={直接業務時間(総労働時間-間接業務時間)÷総労働時間}×{成果+直接業務時間}として表すことができます。

このように労働時間生産性を形で表すことにより、成果につながる直接業務時間を多くし、成果とは直接関係のない間接業務時間を少なくしようとする意識が生まれてきます。たとえば、公益の実現に直接つながらない会計処理などの内部管理事務は、公務の公正性を損なわない限り、できる限り簡素化するといった業務の方向性が意識されるようになる可能性があります。

生産性測定の実例として、電話による照会に対する回答時間の測定の例をあげてみましょう。組織の内外から受ける様々な電話照会に対する回答に、どの程度の時間を要したかを測定し、できる限り、その回答時間を削減しようとするものです。

測定方法は様々ですが、まず、いつ、誰から、誰がどのような照会を受け、誰がどのような回答をし、回答にどの程度の時間を要したか、などを簡潔に記入できるメモ様式を作成します。回答時間は分単位まで記入するとかえって分析が面倒になるので、たとえば、その場で回答した、30分以内、1時間以内、1時間以上要した、などとチェックするだけで十分です。メモは、1週間単位や1ヶ月ごとに集め、その回答時間を集計して、生産性測定の指標とします。

このように回答時間を測定することにより、次のように職員の生産性に対する意識が向上したという結果が出ています。

・どうすれば、職員相互の連絡がスムーズに行われるかを考えるようになり、担当者以外の職員が電話を受けたときの伝言のし忘れ・伝言内容の誤りなどが減少した。

・担当者不在のときに電話を受けた職員が、単に「折り返し電話をさせます」と応対すると、担当者が電話したときに初めて相手の用件を聞くことになり、それから用件に合わせた対応をしなければならず、効率が悪いので、最初に受けた担当者が必ず相手の用件を聞くようになった。

・どうしたら迅速、正確な回答ができるかについて、照会内容を分類したり、回答を標準化するなど、生産性向上に向けての具体的な活動が行われるようになった。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION