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シート5

 

公務の特性

 

公務は、次のような特性を有しています。

 

1 公益性

 

民間の活動は、人々の需要を満たし、利潤を得ることが目的です。民間企業の中には電力、ガス、輸送などの公益性の高い活動もありますが、そうした企業でも基本は利潤追求です。これに対して公務は、利潤を離れ、公益追求を目的としており、その活動費用のほとんどは、税金という明確な対価性のない形で、強制的に人々から徴収されます。

 

2 公平・中立性

 

民間企業の場合、特定の取引き相手に有利な条件を提示したり、閉店間際に大幅な値引きをすることも可能です。他方、公務ではそのような恣意的な取扱いは許されません。公務の活動は、どのような人であれ公平に、中立の立場で行わなければなりません。なお、こうした公平性の要求は、結果として、公務の安定・継続性も求めます。なぜならば、不安定で、急な変更を伴う行政は、不公平さを招く可能性が高いからです。

 

3 権力性

 

民間活動、特に取引きは、両当事者の合意の下に行われ、自らの意思に反して強制されることはありません。一方公務は、その政策を社会全体に確立するため、罰則を設けるなど、強制力を伴うことがあります。

 

4 独占性

 

私企業の場合は、すでに先行する企業があるからといって、これと同じ事業を行ってはならないという制約はなく、複数の企業が競争関係にあります。したがって、ある企業のサービスが気に入らない場合には、他の企業を選ぶことができます。

一方公務は、学校や病院などを除き、民間の参加や同種の事業の運営を規制するなど、強い独占性を有しています。また、公務は、管轄区域が特定されており、自分の住んでいる市のサービスが気に入らないからといって、隣の市のサービスを受けるというわけにはいきません。つまり、国民は公務に対する選択権が限定されているのです。

 

5 法令の根拠が必要

 

公務の活動は法令に基づき行うことが原則になっています。すなわち、行政権限の根源は国民からの付託であり、どのような権限を公務に付託したかを表すのが、法令であるといえます。したがって、法令に基づかずに、各公務員の恣意的な判断により行政を執行することは許されません。そのため、ややもすると公務は硬直的になりやすいと言えます。

 

 

 

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