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3]法人所得税

企業の活動、組織形態が大きく変わるなか、州法人所得課税の公平さ、効率性を維持するためには、個々の州が独自になしえる領域は限られており、租税政策のデザインや運用に関しての州際協調が不可欠である。

1)運用面に関する州際協調の必要性

州企業課税が技術面で詳細にわたり調和されなければ、合法的な租税回避によって公平性が損なわれることは不可避である。また、州間の租税政策協調は企業が最も嫌う二重課税を回避する最善の方法でもある。多州租税委員会(MT.C)加盟州とニューヨーク州の間で交わされた州際銀行の所得に関する相互協定はこの種の試みの好例といえる。

次に、連邦議会が州際所得法を廃止し、National Bellas Hess判決を覆さない限り、州課税権に対するこれらの制限から生じた税収損失は多州籍企業によってのみ緩和できる。州政府は法人が課税されない州においてアポーションメントの要素から法人の売上げと支払い賃金を外すよう協定を結ぶことによって、州際所得法が「帰属のない所得」を生じさせることに対応できる。また、州際売上げが発生した州が州外への販売に売上税を課税し、その税収を協定加盟州で配分するという州際協定によって、州政府はBellas Hess判決に対処できる。さらに、高額な品目を購入した他州の顧客を特定化するための企業調査の情報を共有することもできるはずである。さらに州外への移出に対する売上税に係る統一法を制定することもできるのである。

最後に50州の議会や課税当局がそれぞれ個々の産業の州際取引、例えば電気通信事業の州際サービスについて研究することは非効率である。それは資源の浪費であるのみならず、50州別個の定義の差異は納税者にっても異なった納税協力を必要とする。したがって税法作成に際しての共同作業は州政府にとっても納税者にとっても利点が大きい。州税法の統一性が増せば、共同検査や一括登録、申告書の集中管理など種々の共同税務行政の実現可能性、費用・効率性も高まることになろう。

2)州際協調と税制改革の政治的実現可能性

州間の協力は個々の州が必要な税制改革を行うことを政治的に容易にする。税制改革に際してはその効果、影響について個々の州で検討がなされようが、複数の州が協調・協力して改革案をデザインした場合、より実現が確実となる。例えば、フロリダ州が売上税のサービス課税化を試みた際の結果は、他州との協力があれば異なったものとなっていたかもしれない。同様に、独立申告基準を合併申告基準に変えようとする州が直面するであろう抵抗も、他の独立申告方式の州が同調することで弱められるはずである。州間の協力・協調が州企業課税の活性化には不可欠である。

また、州間の協力・協調は州間の租税競争によって生じている課税ベースの侵食を浸食する深刻な問題化していることについて合意している。

州が「武装解除」し、企業誘致のための租税インセンティブの利用を否定するとは考えにくいが、インセンティブの利用が抑制される可能性は大きい。例えば、州は法人所得税のアポーションメント・ルールや減価償却の統一化や、税率の引下げ、分かり易い投資税額控除などによる競争の可能性はある。こうした協議の場があれば、熾烈な州間競争は回避できよう。

 

 

 

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