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(1)租税競争の帰結としての協調化・均質化

税制の多様性は租税競争による部分もあるが、租税競争における州の戦略は、州外の企業、個人への負担のシフト(税の輸出)と、州外からの企業誘致と高所得層引き入れのための優遇税制が代表的である。また、企業、住民への影響を恐れて思い切った租税政策を「行わない」という意味での競争を行う州もあり、いずれの戦略をとっても(競争がもたらす収斂が生ずる。

(2)連邦政府による課税権侵害への対抗手段としての協調

州によって同種の税の内容、租税政策が異なることによって不利益を被る納税者が、連邦裁判所への訴訟や、連邦議会への働きかけを行い、それを契機に連邦政府による州・地方税財政運営への介入、課税権の侵害が生ずる可能性がある。そうした動きに対応するためには、州際での租税協調が必要となる。また、税制の統一化は税務行政費、納税協力費の節減にも資する。

(3)立地選択等における中立性

企業立地や人口移動に係る選択に際して、州間、地方団体間の税制の較差は非中立的な影響を及ぼす。この問題が州の租税政策において、どこまで認識されるかは不明であるが、企業や個人からは中立性の要件を満たすような要請が強まれば、税制の調和が結果として起こることになる。

 

4 全米知事会・全米州議会議員協議会による州税制の統一化、州際協調への提言

 

さて、全米知事会(National Govenors Association)と全米州議会議員協議会(National Coference of State Legislatures)は1993年に共同して、以上の3つの要素に対応するため州・地方税の多様性を抑制し、個々の州や地方公共団体が租税協調を図るべきことを提言した報告書Financing State Government in the 1990sを発表している。注3以下、その議論を中心に州税制の統一化、州際協調を必要とする、分権制下での租税政策の問題点を具体的にみていきたい。

(1)企業活動の多州籍化・国際化と州企業課税

1]州際課税に対する合衆国憲法と連邦所得税による制約

企業活動の州際化や国際化に対して、現在の多くの州税制は十分に適応できておらず、税収の漏出や州内でのみ事業活動を行う企業と州際、国際的な事業展開を行う企業との間での課税上の公平性、非中立性に係る問題が深刻化している。合衆国憲法の州際通商条項(Commerce clause;合衆国憲法第1条第8節第3項)、1967年のNational Ballas Hess社対イリノイ州歳入局裁判で連邦最高裁が示した判断、さらに、1959年州際所得法(the Interstate Income Law;P.L.86‐272)等によって、通信販売に対して州が利用税や法人所得税を課税できないことから生ずる税収ロスについてACIR(政府間関係諮問委員会; Advisory Commission on Intergovernmental Relations)は1991年の推計で年間約30億ドル(州・地方税)にも及ぶとしている。

さらに、州際所得法について州際取引やセーフ・ハーバー・リース規定(連邦所得税法Sec.168(f)(8)(A)(B))を合法的に利用する多州籍企業のいっそうの増大によって、その税収浸食効果は今後、深刻なものになる。また、企業の垂直的統合と反対の動きが強まることで独立した供給者からの中間財購入が有利となれば、地域移動性のある販売力は個人消費者ではなく、企業への販売を増やし、その面でも税収ロスが生じる。

 

 

 

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