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このプロセスにおいて、資本量の減少とともにA地域の税引き資本価格は回復し始めず資本の流入につれてB地域の資本価格は下落するであろう。かくしてAからBへの資本移動は両地域の税引き収益率が均等となるまで続き、最終的には両者の税引き資本収益率は平均税率分だけ低下するであろう。

これをより一般化して複数の地域で固定資産税の税率が異なる場合を見てみると、ある水準のインプリシットな平均税率が成立するが、経済全体の資本の税引き収益率はこの平均税率分だけ低下するといえる。これは利潤税の負担と類似していることから、「利潤税効果(prrofit tax effects)」と命名されている。

Aのような高税率地域から流出した資本がBのような低税率地域で吸収され尽くさない場合には、A地域の資本は平均税率以上の税負担を強いられ、税率格差に相当する資本コストの上昇が生じる。この部分は価格に転嫁される可能性がある。つまり産業の地域間移動を排除するために特定産業が特定地域に固定して立地すると想定すると、生産物の消費者に税負担が帰着することになる。これは特定財の消費に際して賦課される物品税と類似していることから、「物品税効果」と呼ばれて、住宅財・サービス消費者の実質所得を減少させる。

高税率のA地域からの資本流出は、A地域における土地や労働に対する需要の減少をもたらし、産出量の減少をもたらす一方で、超過供給となった非可動的生産要素の価格を引下げるであろう。とくに供給が固定化されている土地の賃貸料は下落を余儀なくされる。このようなフローの土地収益の減少は土地価格に資本化され、資本課税が地価を下落させることになる。

不均一資本課税は資源配分にも望ましくない影響を及ぼすと考えられる。地域的資源配分への影響、つまり高税率地域からの資本流出による資源配分上の歪みと、経済部門間の資源配分への影響、つまり住宅部門から非住宅部門への資本移動による資源配分の歪みである。前者は低税率地域に資本を集中させ、後者は非住宅部門の資本集約度を高めるであろう。

 

3 固定資産税の一般均衡分析(その2-Hobson model)

 

3-1 Hobsonモデルの位置づけ

Aaron(1975)やCourant(1977)は、Mieszkowskiの研究を評価しつつも、その理論的基盤が必ずしも十分でない点を指摘し、とくに1部門、3生産要素(資本のみが可動性をもつ)モデルを批判し、2部門、3生産要素(資本と労働が可動的)のモデルによる分析がより適切であると指摘した。これを受けてHobson(1986)やLin(1986)(3)は2部門、3要素(資本と労働が可動的)、かつ複数のコミュニティを含むモデルの構築に取り組み、従前のMieszkowskiモデルの拡張に努めた。Hobsonは伝統的立場とMieszkowskiの新見解をともに特殊ケースとして説明できる「一般的モデル」を提示しようと試みた。Linは同じ2部門、3要素ながら労働の可動性を効用均衡化メカニズムで説明するモデルを示している。ここではHobsonのモデルを中心に固定資産税の帰着分析を見ておく。

 

 

 

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