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(8)水野忠恒・(判例評釈)判例時報992号157頁(判例評論266号19頁)(昭和56年)は、地方団体の課税権限を定めるにあたり、経済政策的考慮なかんずく一定の企業優遇政策を導入することの可否を憲法14条との関係において検討すべきであるとする。

(9)租税審判所の構想について、碓井光明『地方税の法理論と実際』266頁。

(10)たとえば、オーストラリアにおいて、ヴィクトリア州のLocal Government Act 1989は、法人にも選挙権を与えている(一般に13条、メルボルン市につき13A条)。また、シドニー市については、碓井光明「都心自治体における選挙権のあり方―シドニー市の制度に接して」自治研究66巻8号3頁(平成2年)を参照。

(11)碓井光明「地方税をめぐる条例の位置づけ」税40巻3号4頁(昭和50年)。

(12)碓井光明「税と手数料等との区別」地方税49巻8号4頁(平成10年)。

(13)塩野宏『行政法III』(有斐閣、平成7年)86頁は、公権力の行使を付託される組織それ自体は原則として民主的コントロールの及ぶ国及び地方公共団体の行政機関であり、公権力の行使を伴う行政作用の委任については、必要性の根拠が明確でなければならないとする。また、受任者が法人の場合に、過度な介入は委任行政の趣旨に反し、そこに委任行政の限界があるとする。

(14)たとえば、カナダのアルバータ州は、1995年に財産税の評価を全面的に民間企業に委託する行政改革を実施し、また、オンタリオ州等は、特別の法人を設立して、評価事務を実施しているという。山崎一樹「カナダの固定資産税制度について」資産評価情報平成10年4号2頁。

(15)相続による不動産の取得は、相続人が被相続人の財産に属した一切の権利を承継する民法の建前(民法896条)から、「所有権の移転は単に形式的に行われるにすぎず、所有権の主体は実質的には変更ないものと解されるところから非課税とされている」と説明されている(前川尚美ほか『地方税[各論I]』(ぎょうせい、昭和53年)410頁)。相続と異なり、贈与による不動産の取得は課税されているのであるから、二重課税を避ける趣旨によって説明することは整合的でないことは明らかである。なるほど、遺産分割の場合を除き、個々の財産に分解した取得行為がないことは、通常の不動産の取得の場面と異なっている。しかし、何故「形式的な所有権の移転」と見るのかが筆者には理解できない。「被相続人の死亡に伴い、特別の意思表示のない限り若しくは承認の意思表示により必然的に若しくは受動的に財産の承継が行われ、且つ、そのため不動産取得税の負担能力との関連性の稀薄な相続」という見方(細郷道一=鎌田要人『例解地方税法精義』(白桃書房、昭和33年)495頁)であるならば、それなりに納得できる。

 

 

 

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