第二に、現在、相続による不動産の取得は、形式的な所有権の移転にすぎないという理由で不動産取得税が非課税とされている(地方税法73条の7第1号)(15)。しかし、相続税の遺産にかかる基礎控除額が相当高く設定されている現在(もっとも、これは人により、あるいは居住する地域により異なった受けとめ方がなされよう)、相続税の課税されない不動産の取得が、まったく税負担なしでよいのかは検討されてよい。相続税の課税対象になる場合に相続税との二重課税が生ずるとしても、多数の不動産が現実に相続税の対象になっていないことを考えると、不動産取得税の課税対象にして、道府県の財源の充実を図ることを考えてもよいと思われる。
第三に、大牟田訴訟に関して若干言及した点であるが、最近は、景気対策、住宅政策などのために地方税の軽減策が動員されている。分権化の推進にともない税収の確保が必要とされるなかで、国としての政策と地方団体の税収の確保の必要性とをいかに調和させるかが大きな課題となろう。
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(1)天川晃「変革の構想―道州制論の文脈」大森彌=佐藤誠三郎編『日本の地方政府』(東京大学出版会、昭和61年)。集権・分権、融合・分離という軸で分析する方法は、行政学の分野に共通の財産として定着しつつある。たとえば、西尾勝『行政学』(有斐閣、平成5年)63頁以下など。ただし、その場合の融合・分離は、主として国の事務の処理の方法に関する視点である。
(2)碓井光明「地方財政の展開とシャウプ勧告」日本租税研究協会『シャウプ勧告とわが国の税制』(日本租税研究協会、昭和58年)307頁、378頁以下。
(3)碓井光明『地方税の法理論と実際』(弘文堂、昭和61年)7頁以下。
(4)中里実「地方税における企業課税」岩波講座『現代の法8政府と企業』(岩波書店、平成9年)233頁は、「課税管轄権の衝突」の解消問題として問題を提起している。立法に当たって、諮問手続の経由の重要性が指摘されることがある。大牟田訴訟の問題場面について、和田英夫・(判例解説)『ジュリスト租税判例百選』(昭和58年)18頁。
(5)これまで、地方税に関する自治大臣の関与に際しては、「地方財政審議会」に諮問する手続がとられてきた。
(6)たとえば、茨城県は、従来から核燃料税を課税してきたが、平成11年4月から「核燃料等取扱税」を導入して、課税対象行為を拡張し、研究用原子炉にも課税し、特殊法人も課税するなどの方針を発表している。
(7)碓井光明・前掲注(3)、357頁。