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最も大きな問題は、民間事業者には、その性質上コントロールに限界があるということである。特殊法人、あるいは現在議論されている独立行政法人の場合には、相当程度のコントロールが働きうるが、過度なコントロールを及ぼす場合には、そのような法人を設立したメリットが失われるであろう(13)

筆者は、目下このような徴税機関民営化論を唱えるつもりは全くない。ただし、分権化との関係においては、主要な税目について、収入の帰属する地方団体が自ら汗をかく必要のあることはすでに述べた。

なお、固定資産税の評価事務についていえば、はたしてすべてを市町村の職員が行わなければならないかが問題となる。評価作業が一時期に集中するという問題もあり、職員の業務の平準化も課題になる。そこで、行政のスリム化の要請から、民間業者への委託が課題として登場しよう。あるいは、広域的な評価法人の設立も検討対象になりうる(14)

まず、現在も、評価に必要な一部の作業は委託していることが多い。この「委託」は、私法上の契約によるものであって、法律による委任とは異なる。この方式をどこまで拡大することができるのか、それが分権の推進と関係があるのかが問われよう。

固定資産の評価の適正さが問題とされるときに、評価額の決定までの作業をすべて委託した場合には、評価に関して住民に対して責任を負えるかが問われよう。さらに、評価作業の性質上、特定の業者に固定しやすく、したがって委託契約が公正に締結できるかどうかが大きな課題となる。入札方式の工夫、あるいは提案募集の評価に基づく契約などが必要となろう。

なお、いわゆる評価の一元化が地方分権に反するとは思われない。

 

6. おわりに

 

どうやら、本稿は、分権の推進を積極的に実現するための議論というよりは、これから提案されるさまざまな政策が分権の趣旨に反しないかどうかという、消極的ないし受け身の議論に傾きすぎてしまったきらいがある。ことに、目下最も大きな課題である税源の充実について、法定外税など部分的な検討に終わったことは、誠に遺憾である。もっとも、税源の移譲策については、本研究会の他のメンバーの方々の得意とするところで、筆者の出る幕はないと言えよう。ただ、以下若干の思いつきを付加して、閉じることにしたい。

第一に、どのような税源移譲を行おうとも、地方団体間の税収格差は避けられない。しかし、それを少しでも埋める方策として、一定の要件を満たす市町村に対しては、市町村民税の一部を、法律により又は納税者の選択により移転することを許容してはどうであろうか。筆者が念頭においているのは、田舎に収入のない親をおいて、都会で働き収入を得ているような人が、親の居住する市町村にも住民税を納付することによって、親の受益に対する一定の負担をするものである。按分の方法、手続の煩雑さなど検討すべき課題は多いが、高齢者の介護費用が増大することを考えるときにぜひ検討対象にされることを希望したい。

 

 

 

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