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しかし、ある地方団体の法定外税採用について、不服のある他の地方公共団体が争う方法は予想されていないように見える。地方税法8条による「課税権の帰属その他この法律の適用について他の地方公共団体の長と意見を異に」する場合に含めることができないとは断定できないが、法定外税に関する限り、現行法は、自治大臣の適正な許可権限の行使に期待しているとみるのが自然である。

法定外税の採用が弾力化され、自治大臣の役割も変化すると仮定した場合には、地方団体間の利害が対立し、その調整が必要になる場面が考えられる。例えば、ある市に隣りの町の住民の利用率が極度に高い駅がある場合に、その駅の利用のために自転車を隣り町の住民が多く利用していると仮定しよう。その市において、駐輪場利用税を設けた場合は、実際には、ほとんどが隣りの町の住民の負担になることが予想される。その隣の町が自転車の保有税を課す場合には、人により、自転車保有税と駐輪場利用税を課される結果になる。こうした事態に、どう対処していくかが制度的検討課題になる可能性もある。

 

5. 賦課・徴収

 

(1)賦課・徴収主体と収入帰属主体とのあり方

地方税の賦課・徴収主体は、必ず収入帰属主体に一致しなければならないかどうかが問題になる。

筆者は、賦課権・徴収権を他に委ねても、ただちに決定的に問題であるわけではないと考えている。もちろん、場当たり的な「賦課徴収一元化論」を警戒する必要があることは言うまでもない。

現在、地方消費税は国税機関が賦課徴収しており、個人の道府県民税は、市町村が賦課徴収している。外国には、国が地方税を賦課徴収する制度を採用している国もある。そのような制度が、ただちに「分権化の動き」に反するとも思われない。

しかしながら、それぞれのレベルの地方団体が、少なくとも、基幹的な一税目については、その地方団体自身の職員が汗をかく必要があろう。現在の地方税制をみると、道府県にそのような税が存在しないことが問題である。

なお、しばしば、地方団体が国税をも地方税と合わせて賦課徴収する方式が提案されることがある。形式的には、国の仕事を地方団体が行うもので、好ましくないという議論が出されるかも知れないが、国と地方団体のトータルな効率化に資するもので、合理的な理由があると見ることも十分できるように思われる。

(2)賦課徴収事務の民間への委任

賦課徴収事務の全部又は一部を民間に委任できるかという問題が浮上する可能性がないとは言えない。「徴税請負人」という古いイメージではなく、行政のスリム化の議論の中で、徴収一元化論と結合した「徴収機関民営化論」が台頭する可能性がある。賦課徴収の権限を民間に委ねる場合には、法律の根拠を要することは言うまでもない。その場合に、さらに、そもそも、賦課徴収を委任できるのか、どのような限界があるのかを明らかにしておく必要がある。

 

 

 

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