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(3)受益と負担との近接関係

受益と負担との近接関係をどこまで要求するかが問題である。両者の近接関係の強い場合には、「税」と言っても、手数料や使用料受益者負担金に近いものになる。税の場合は、もともと近接関係が極端に強度である必要はないと考えるべきである。児童・生徒を有しない住民に対しても教育に必要な財源として固定資産税を課することに問題はない。

受益と負担との関係を議論する際には、事務・事業によっては、受益と負担との近接性の故に、手数料・使用料方式との優劣を考える必要がある。

 

4. 法定外税

 

法定外税が許容されていると言っても、有力な税源はすでに課税されており(特に一般消費税の存在が大きい)、あまり多くを期待することはできない。その点はさておき、若干の論点について考察しよう。

 

(1)政策税制としての活用

法定外税は、今後は、単に税収のみよりも、一定の行為の抑制目的などの政策税制として活用される可能性が大きいように思われる。抑制目的を込めて金銭負担を求める場合に、法定外税の手続を要するか否かをめぐって、税と他の収入形式である手数料等との区別が問題になる(12)。手数料等の場合は、国との協議・合意を要しないからである。もちろん、手数料等であるからといって何らの限界もないというわけではない。

(2)他の税との重複をどうみるか

現行地方税法において、「国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、且つ、住民の負担が著しく過重となること」が消極要件とされている(261条1項1号、671条1項1号)。そこで、消費税、地方消費税という包括的消費課税が存在する今日、法定外の消費課税の重複が許されるかどうかが問題となる。たとえば、パチンコ売上金額に課税することは、課税標準を同じくするといえるかも知れない(仕入税額控除がないことは影響しないとみてよかろう)。しかし、負担過重の要件との関係で、前記の消極要件に該当しない可能性がある。したがって、消費関連の法定外税は、法律的には許されるが、政治的に説得が困難であるにとどまるように思われる。

(3)国との調整

許可制度から、協議による同意(合意)制度になった場合には、その実質の運用がどのようになるのかが問題である。これまでに実施されてきた事前の非公式協議、ないし内諾は廃止されるのかどうか。同意(合意)の得られなかった場合の事後処理はどうなるのかといった問題がある。本稿の執筆時点において、法改正の内容を知りえないので、残念ながら、この点の検討をすることができない。

(4)地方団体間の調整

現行法は、前記の消極要件のほか、「地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること」という消極要件を設けて(261条1項2号、671条1項2号)、「他の地方税」、「地方団体間における物の流通」に対する配慮を加えている。

 

 

 

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