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(2)財源確保の自主性

サービスの程度に関する地方団体の自主的判断(住民の選択)を可能にするには、地方団体の財源確保の自主性を保障する必要がある。そのためには、自主財源たる税の充実によることが望ましい。しかも、住民の選択を可能にする税制等が不可欠である。

(3)地方税における法人の位置づけ

地方団体の税収において、特に道府県税の場合には、法人からの収入のウェイトが高いことは周知の通りである。そこで、投票権のない法人の税負担を法人の同意なしに増大させてよいのかという問題が、超過課税等に関連して指摘されることがある。この点について、非公式ルートの発言権は、個人住民に比べて、法人の方が格段に強いと見られるという見方もあろう。したがって、法人の投票権を過大に強調することは避けなければならない。しかしながら、国によっては、不動産の所有者・使用者などの立場において、法人に投票権を認める例があり(10)、特に大都市における「法人住民」の果たす役割の大きさを考えるならば、今後の検討課題として考える必要がある。

このような背景から、法人の理解を得る必要性は大きく、したがって、手続の検討の必要性はあるが、法人の受益に対して課税が許されることは当然である。

 

3. 受益と負担との緊張関係

 

現行の地方税財政制度は、受益と負担との緊張関係が欠如していることが最大の問題であるように思われる。そのような状況になっている理由を考えてみよう。

まず、行政目的別地方団体が存在せず(「総合行政主体」)、自ら負担した税がどこに使われるのか住民に明確でない。このことは、目的税とされる都市計画税の場合でさえ、多くの場合同様である。

しかも、地方交付税、国庫支出金その他の国からの収入(たとえば、教職員費県費負担など)が地方団体の財源のうちに大きな割合を占めることによって緊張感が希薄になっているのが実情である。

そこで、以下のような税制を仕組む必要がある。

 

(1)負担の程度を受益との関係で決定できる税制の必要性

地方分権は、単に首長や職員への分権ではない。住民の意思決定が機能するシステムにすることが必要であり、このことは、地方税に関しても変わるところはない。

このような観点に立った場合に、税目決定権のみでは、あまり期待できない。現状から見る限り、個別税目と受益との関係が不明確であることが問題である。住民にとって、トータルな受益は認識しにくいからである。

ただし、地方分権推進計画に示されている法定外目的税の創設ができることになると、緊張感の醸成が期待できる。もっとも、目的税であっても、原則として特定の経費をその税収のみによって賄う制度、あるいはそれに近い制度でなければ、緊張感が不明確になる(後述の都市計画税の議論を参照)。

 

 

 

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