日本財団 図書館


2]行政的関与

前記のような立法的関与と行政的関与とは、はっきりと区別しなければならない。たとえば、地方税に関する税率の採用について主務大臣の許可制を採用したり、税の減免基準について主務大臣の承認を要するなどの制度を採用する場合には、自治体の意思決定に対して「国の行政権」の判断を優先させることになる。一連の地方分権の動きのなかで、国の行政的関与は縮減の方向で制度改正が進められようとしている。地方税の分野についていえば、法定外税の許可制度が改められるのが、その一環の制度改正である。

ただし、地方団体の連合体による意思決定が可能になれば、行政的関与を行う場合に、その連合体に対する諮問手続を経て関与する方式が考えられ(行政的関与を補完する諮問手続)、何らの諮問手続を経ない関与に比べて弊害の発生を除去することが可能となる。しかしながら、前述のように、地方団体の数が三千を超える現在の状況においては、連合体の適正な意思形成を必ずしも期待することができないので、行政的関与を補完するために諮問手続を経る方式の採用は現実的でないと思われる(5)

(3)立法的関与の程度

国による立法的関与が許容され、あるいは必要とされるとしても、どの程度の関与が望ましいかという問題が残される。地方税に関して、主要な意思決定権等としては、次のようものが考えられる。

a.税目決定権、b.課税標準決定権、c.税率決定権、d.確定権(賦課権)、e.徴収権、f.紛争裁断権

これらのうち、dとeについては、後述することにして、それ以外の事項について、簡単に検討しておきたい。

1]税目決定権・課税標準決定権

まず、課税権の調整の観点からは、税目の振り分けの決定権は原則として国に留保せざるをえないように思われる。ただし、前述したように、日本の地方税法が法定外の税(現在は普通税のみであるが、地方分権推進の動きのなかで目的税も可能にすることが予定されている)を創設する権能を地方団体に認めていることは、きわめて重要である。地域の実情に応じた「租税発見権(Steuerfindungsrecht)」を付与するものである。

しかも、地方分権の推進の一環として、自治大臣の許可制から、協議に基づく同意(合意)制に変わろうとしている。その運用次第では、著しく「租税発見権」を阻害するおそれもあるが、すでに、地方財政の危機の中で、新しい法定外税の採用も模索され始めており(6)、法定外税の許容は、それなりの評価を受けるべきものである。

さて、税目は、単に税源ないし課税客体のみで特定されるとは限らないので、法律によって選択された税目(法定税目)については、課税標準決定権も原則として立法に留保せざるをえないであろう。その際に、国民健康保険税や、かつての住民税のようにメニュー方式によることもありうるが、日本において根強い「均等化志向」は、その効用を容易に発揮させない状況にある。たとえば、目下議論されている事業税の外形標準課税も、現行の地方税法がすでに補充的メニューとして用意している課税標準であるにもかかわらず(72条の19)、種々の障害により、採用されたことがないのである。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION