おわりに
これからの分権型社会において地方団体の自己決定権とともに重要なテーマと考えられる「納税者にわかりやすい税制」について最後に触れておきたい。
分権型社会において、これまで以上に重要な役割を果たすことが期待されているのが納税者たる住民である。納税者が身近なところで税を納め、それがどう使われるかを監視していくことで、税の使われ方も効率化すると考えられる。納税者による歳出チェック機能を働かせていくためにも、納税者にわかりやすいよう地方税の制度面、執行面の透明性を向上させることが必要である。
そのためには、次の3点が重要であると考えられる。
まず、第一点が税制の簡素化である。
今回のアンケート調査において、分権型社会に対応した地方税制のあり方について意見を求めたところ、現在の税制は複雑化し、納税者や税務職員にとって大変理解しづらいと税制の簡素化を求める声が少なくなかった。非課税等特別措置の整理合理化は、税負担の公平や課税ベースの拡大にもつながる。
第二点が、受益と負担の関係の明確化である。
国からの依存財源が多くなると歳出削減のインセンティブが働きにくく、やはり受益と負担の関係を明確化していくことが重要と考えられる。そのためにも、住民に身近な地方団体において自主的・自立的な行財政運営を行っていけるよう地方税源の充実を図る必要がある。納税者の理解を得るという意味では、受益と負担の関係を明確化させた法定外目的税は、新しい課税の選択肢になると考えられる。
第三点が、情報公開、税務広報、納税相談などの充実である。これは、税制に限った話ではなく、分権型社会におけるあらゆる地方行政の分野に求められるものと言えよう。
いずれにせよ、行政サービスのコストと住民の税負担の関係がわかりやすいよう地方税制は簡素かつ明確であるべきで、分権型社会における地方税制のあり方を考えるにあたって、今後この点についても検討が進められることを期待したい。