日本財団 図書館


地方債償還の際の元利償還金が事業費補正で100%交付税措置されるということになると、地方団体の共有財源からの償還になり、将来世代への負担転嫁にはならないという見方もできるが、起債償還時に不交付団体である場合は将来世代への負担転嫁となってしまう。また、所得税、法人税などの国税の減税は地方交付税の減収に直結するため、将来的に地方交付税総額が十分確保されるかといった問題もある。

 

2]地方団体における金融政策手段の欠如

国は通貨発行を操作する権限を持っており、金融財政と連動させて国債を管理することができる。かつては通貨発行量の増大等によるインフレーションのため、国債の償還負担が事実上軽減されたこともあった。

一方、地方にはそのような金融政策手段はなく、地方債はその地域の将来世代が確実に税によって償還していかなければならない。

 

3]資本市場における信用力

現在は、経済対策の実施に伴って発行される地方債については、郵便貯金等を原資とする政府資金が優先的に手当されることが多いが、市場公募債において国債との利率差が指摘されるようになっている。

地方団体は国に比べて資本市場へのアクセス能力が劣っており、今後、財政投融資制度の改革や金融の自由化などが進むと、地方団体ごとに資金調達コストに格差が生じ、地方債の信用力が問題となって、極端な場合には市場からの資金調達ができない地方団体が出てくる可能性もある。地域福祉の担い手となる地方団体が危機的な財政状況になるようでは、それこそ景気に深刻な影響を及ぼすことになる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION