3. 国の経済政策と地方税制
平成11年度の税制改正においては、いわゆる6兆円を超える規模の恒久的減税が行われるが、数次の景気対策等のために地方債残高は累増し、大幅な税収不足が見込まれる中で、国の景気対策に地方がどこまで協力すべきか、特に国と地方で減税額をどう分担するかについて議論があったところである。
そこで、国の経済政策と地方税制のあり方について、景気対策としての地方税減税を公共事業等の財政出動と比較しながら考察してみたい。
(1)国と地方の歳出、税収の規模
我が国においては、国民生活に密接に関連する行政は、そのほとんどが地方団体の手で実施されており、政府支出に占める地方財政のウエートは、国と地方の歳出決算・最終支出ベースで約3分の2となっている。また、我が国は国民経済に占める公的資本形成のウエートが7.3%と諸外国に比べて高く、財政支出を景気調整に利用できる幅が広い。地方団体はその約8割に相当する6.2%を執行しており、地方団体が公共事業など社会資本整備に極めて大きな役割を果たしている。
一方、租税総額に占める地方税収入の割合は4割弱にすぎない。政府支出の3分の2を占める地方の歳出規模と4割に満たない地方税収入との乖離を縮小していくことが地方分権に向けての大きな課題である。この流れに逆行するような地方税の減税には、慎重でなければならない。
(2)地方団体の自主的選択
公共事業の場合、補助金(交付税措置のある地方債など手厚い財源措置が講じられ、国から経済対策に協力するよう働きかけはあるにしても、社会資本整備を前倒しして実施するかどうかは最終的に追加事業を予算化する地方団体が判断することになる。
一方、地方税減税の場合は、国会で地方税法が改正されると地方団体としてはその決定に従うこととなる。したがって、地方団体の課税自主権を尊重する観点からも国の経済対策としての地方税減税には、慎重になる必要があると考えられる。