日本財団 図書館


これらの中で第二、第三のタイプ、特に第二のタイプについては、住民の受益と負担の関係を明確化することにもつながるので、税率の多様性を許容してもよいが、第一のタイプの税率格差は財政調整によって平準化すべきであるという指摘がある。

また、財政調整制度が十分でない場合には、税源の乏しい地方団体が自らの税収で財政需要を賄おうとすれば、高い税率を設定せざるを得ないこととなるため、地方団体が税率決定権をフリーハンドで行使し、財政責任を高めるためには、財政調整制度を十分に確立することが不可欠であるとされている。

このような考えに関しては、シャウプ勧告においても、税源の乏しい地方団体について「事実上のみならず原則的にもその固有の税率を変更してその住民に与えているサービスの量を変更する自由を有するようこれらの貧困な地方に対しては中央政府が特別の支持を与えること。われわれの勧告する種類の平衡交付金の下においては、このような地方団体もある程度真に自由な施策ができるよう十分支持が与えられる。」という指摘がなされている。

地方団体に課税自主権を与えれば財政調整制度は縮小できるかのような見解も一部に見受けられるが、このように財政調整制度は必ずしも地方団体の税率決定権を制約するものではなく、むしろ地方団体の課税自主権を保障する側面があることも無視してはならないと考えられる。

なお、住民移動に直面することによって、税率の多様性は維持できなくなるのではないかという点については、経済理論が想定するほど住民は移動しないのではないかというのが北欧の経験のようである。その理由については多くの説明がなされているが、既婚女性の就業率の高さがそのひとつとして指摘されている。

標準税率未満の課税については、ある団体が低い税率を採用した場合、どのような影響が生じるかということに関し、第2部の西野委員の報告において、固定資産税について税率の引上げ、引下げを行った場合の経済効果が論じられている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION