3]標準税率未満の課税
ア 地方債発行制限の緩和
現在、法定普通税について標準税率を下回る税率で課税を行う場合は、地方財政法第5条によって公共施設の建設等のための起債発行が禁止されている。
この規定の趣旨は、公共施設や公用施設の建設事業費等については、一般財源で賄うことが原則であり、また地方債は後年度にその償還を最終的には租税によって行うこととなる借入金であることを踏まえて、地方債に財源を求めてこれらの事業に係る費用を賄おうとする場合には、その前提として、現時点において通常に確保すべき財源を確保していることが、財政の健全性の確保や世代間の負担の公平の確保の見地からも必要とされるというものである。
言いかえれば、通常よるべき税率による収入を確保していない地方団体が、将来の税収入によってその元利償還金が償還されることとなる地方債を財源として、公共施設等の建設を行うのは適当ではないという趣旨である。
なお、地方財政法第26条では、地方団体が違法に確保すべき収入の徴収等を怠った場合においては、その地方団体に対して交付すべき地方交付税の額を減額し、又は既に交付した地方交付税の額の一部の返還を命ぜられることがあるとされている。
現在、標準税率を下回る税率で課税を行っている地方団体は皆無となっているが、これは地方財政が厳しい状況にあって財源の確保が強く求められていることや地方団体間で横並び意識が強いことのほかに、こうした規定があることなどにもよるものと考えられる。
地方分権推進計画では、地方財政法第5条の基本的な考え方は維持しつつ、課税自主権の尊重の観点から「普通税の税率が標準税率未満の地方公共団体については、従来、公共施設・公用施設の建設等の財源に充てるための地方債の発行が禁止されてきたが、(キ)と同様の仕組み(地方債の発行自体を禁止し、特定の場合にはそれを例外的に解除する手法として許可制度を設ける)を導入する。」とされたところである。
このことにより、標準税率未満の課税団体についても、一定の場合には、公共施設の建設等のための地方債を発行できる途が開かれることになる。