イ 財政上の特別の必要
地方団体は、財政上の特別の必要がある場合には標準税率によることを要しない。つまり、財源が不足する場合には標準税率を超える税率を定めることができ、財源に余裕がある場合には標準税率を下回る税率を定めることができるわけである。超過課税を行うためには「財政上の特別の必要」があることが要件となっている。
したがって、財源超過と財源不足は同時には発生し得ないことから、一方の税目で標準税率を下回る税率を定め、他の税目で超過課税を行うのは違法と解されている(昭和26年8月2日行政実例)。また、特別の財政需要は未来永劫続くものではないので、超過課税の実施にあたっては、その期限を定め、期限到来時においてはその必要性について改めて検討することが必要である。
アンケート調査で「財政上の特別の必要」についてどのように考えているかを聞いたところ、都道府県では「一応期限は定めているが、中長期的な財政需要を想定している」という回答が8割を超え、市町村では「財政需要からして特に期限を定めることなく超過課税を継続していく予定である」という回答が8割を超えた。一方、「財政需要として具体的なものを明示しており、財政需要がなくなれば超過課税も当然終了する」という回答は、5.7%にとどまった。また、超過課税の期限が到来した際にも、都道府県では「超過課税の解消や税率の見直しなどを議論した」という回答が8割を超えたのに対し、市町村では「従来どおりの超過課税を単純に延長した」という回答が6割近くであった。
これに対して、納税者からの異論としては「永年にわたり超過課税を安易に継続しているのは行政の怠慢であり、行政不信につながる」「中長期的な財政需要ということで課税しているが、このような財政需要は地方公共団体ならどこでもあるもので、特殊な財政需要とは言えない」といった声が地方団体に寄せられている。
超過課税を行う場合には、その財政上の特別の必要性を十分に検討し、納税者の理解を得ることが重要と考えられる。