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標準税率は、地方団体が課税する場合に通常よるべき税率として、地方交付税の基準財政収入額の算定基礎として用いられており、地方団体は標準税率によって課税していれば、標準的な行政を行える法律上の建前となっている。

しかし、地方団体は財政上の特別の必要がある場合、すなわち財源が不足する場合は超過課税を行うことができ、また、財源に余裕がある場合は標準税率を下回る税率を定めることができる。なお、平成10年度改正では、地方分権を推進する観点から、標準税率を採用しない場合における国への事前届出が廃止されている。

課税自主権を尊重する立場からすれば、地方税をどれだけ課するかについては、その地方団体の行政の内容と住民の意思に委ねられるべきであるが、税目によっては、国民の租税負担の公平や国家の経済政策等の観点から、地方団体が課税する場合に超えてはならない税率等について一定の規制を加える必要があると考えられる。

そこで、地方税法においては、法人道府県民税の法人税割、個人事業税、法人事業税、ゴルフ場利用税、自動車税、法人市町村民税の法人税割、均等割、固定資産税、軽自動車税、鉱産税について標準税率のほか制限税率が定められており、課税が市町村の任意とされている都市計画税では制限税率のみが定められている。

現在、法人関係税に超過課税が多い状況についてアンケート調査では「個人への超過課税は納税者の理解を得ることが困難であり、担税力のある法人への超過課税を行うのはやむを得ない」と回答した地方団体が8割を超えている。また、全都道府県がほとんど横並びで中小法人の負担軽減とあわせて法人住民税の超過課税を行っていることから、現状にあわせて標準税率を改正すべきであるとの意見もあった。

一方、平成8年度の政府税制調査会法人課税小委員会報告においては「個人住民税所得割については超過課税がなされていないのに、法人課税の超過課税が行われていることは問題ではないか」という意見があったことが報告されており、今回のアンケート調査でも有識者では「住民税や固定資産税など個人も負担する税への超過課税も行っていく必要がある」という回答が4割強で最も多かった。また、企業からの異論として「事業税の超過課税は地域間において課税の不公平を引き起こす」、「産業界で進められているリストラに比べて行政改革は不十分だ」といった声が地方団体によせられていることも考慮する必要があるだろう。

 

 

 

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