続きまして、PFIプロジェクトのリスクとシェアについてです。
一番これが日本においてもはっきりしなかった部分なんだろうと思います。これはもちろん公共事業に限らない話なんだろうと思うんですけれども、今までは例えば私ども銀行の取引でもそうなんですけれども、時として契約のみに基づいてものごとを進めるということは必ずしもビジネスマナーに沿わない部分もあったわけでございます。そのあたりについては、PFIの場合はすべて一つ一つ決めていくという必要がでてきます。公共工事を民間に委ねるということですから、はっきり決めないと後でどっちがやるべきかということでもめるわけには行かない内容でございますので、このあたりについてはもちろん日本のみならず、イギリスにおいても議論があって、きっちり詰められているということでございます。ここにあるのは一つの例ですけれども、設計・建設の最初の段階で特に言われることと致しましては、作る方は基本的には民間でやって下さいねと。これはご存じだと思いますが、企業は『官』が動かなくてもその場で責任をもってやってくださいよ、というような形の契約にするケースが多いようでございます。逆に、土地の収用。これについては民間が行政執行力をもって収用するわけにはいきませんので、その部分については基本的に『官』の方にリスクをお願いしたい、ということがイギリスでも言われております。
それからオペレーションリスク。ここに書いてありますけれども、公共は需要の最低保証はしない。いわゆるマーケットのリスクは基本的に民間が負う。先程の道路の関係もそうなんですけれども、車が1台も通らなかったらこれはお金が入ってこない。この部分については民間が引き受けた以上は民間が負いなさい、という構成になります。一方で庁舎の場合ですと、仮に『官』の側が何らかの事情で利用しなかったとしても、利用可能な状態であればお金を払って下さい。これは契約の決めごとですから、そうすることによって庁舎等の建設に当たっての経済性を確保する、という構成でございます。その後の運営、メンテナンス、この点については、民間が委託を受けた場合は当然に民間のリスクということになります。
それから、このあたりはご質問が多かったところなんですけれども、イギリスの入札手続についてでございますが、実際には個別のプロジェクトを行うに当たって、ではどういうサービス内容であれば民間に委譲できるかというのを、プロジェクトを組成していく段階で議論されております。その中で、ではこのプロジェクトということに話が進んだところで、次に内容について固めていくと。
「PFIというスキームを導入するに当たっては非常に時間がかかると聞いているけれども、どこに時間がかかるんでしょうか。」というご質問があったんですけれども、やはり時間がかかるのは、この『プロジェクトの中身を固める』部分、例えばどういうような範囲についてやるのか、どういうふうな性能についてのサービスを求めるのか、そういうところがまず第一に時間がかかると思います。
それからもう一つ、第二に、この次の『審査』ですね。実際に何を審査するのかと言いますと、DBFOということで、今までですと実際にはある程度の設計を事前に固めた上で仕様書の形を作り、「ではゼネコンさん、入札して下さい。」という形になりますし、入札が進めばあとはゼネコンさんの方に委ねて、その意味では民間の方で造ってくれますので問題はないんですけれども、基本的には「造って、造った後のオペレーションをするに当たってどういう条件で民間に委ねるか」まで、全部決めなければいけません。その時に、一件だけならいいのですけれども、当然のこと入札という形でやりますから、こういうときには10件以上くるかもしれない。それをDBFOのすべての段階で全部やっていくことになると、当然『官』の方でもノウハウが要るし、どちらがいいかを決めるというのはやはり時間がかかるところかなと思います。