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2 コミュニティ施設の意味〜転用によって生まれる施設とは

 

学校施設の機能変化は大きな意味を持つ。では、転用によってどのような施設を生み出すべきなのだろうか。私たちは1]横須賀市粟田小学校(デイサービスB型、福祉法人に運営委託)2]習志野市秋津小学校(市民による自主管理)3]横浜市六つ川台小学校(コミュニティスクール)など、各地の先進事働の調査も並行して進めてきた。その結果、川崎市にふさわしい転用施設として、学校の余裕教室を地域の「コミュニティ施設」とすることにした。

それは、各地域ごと、市民要望が多岐に別れており、行政側の一方的な考え方から施設内容を決定することは、余裕教室の意義から考えてふさわしくないとし結論づけたからである。すなわち、施設自体の使い方そのものを地域に委ね、管理も地域に任せることが新たな時代にふさわしい施設整備の方向としたものである。

それでは、新たに生み出される「コミュニティ施設」とは何だろうか。私たちは三鷹市などの調査を進め、コミュニティを醸成する施設の意味、余裕教室に関する先駆事例の整理を行った。他都市事例を川崎の現場にどう活かすか、私たちの智恵がためされた。

 

(1) 「コミュニティ施設」の意味

 

コミュニティ施策において、市民が身近に利用できる施設の整備は大きな比重を占める。施設はあくまでコミュニティ醸成の媒体だとしても、市民がつどい、学び、活動する場の意味は大きい。

阪神淡路大震災を契機とし、「コミュニティ」という概念はより実質的なものとして再定義されようとしている。さまざまなまちづくり活動を通じ、豊かな人間関係や信頼関係を築き上げていた地域ほど、素早く震災後の救助や救援を行い、そして復旧、復興への道どりは確かだった。コミュニティという概念が人と人との目に見える具体的な関連を示すものとしてその意味内容が語られ始めた。自主性と責任を自覚した市民が、自らの手によって民主的なルールを形成し、地域社会の諸課題を解決・処理していく能動的なものとして再度、コミュニティヘの期待が高まった。

 

 

 

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