日常生活圏にあって市民が利用する施設をコミュニティ施設と呼ぶことが多いが、個々のコミュニティごとの独立性・自立性を尊重するのであれば、その意味合いは違ってくる。画一的な構造・規模、統一的な利用規定というあり方では、重層的な市民の自主的な活動や地域ニーズを柔軟に満たしていくことは難しい。それは各地域ごと、画一的に整備するものではなく、市民のニーズに応じて施設内容や利用方法を決定するものである。
コミュニティ施設は、一定の行政目的・サービスに特化した施設ではなく、重なり合いながら、さまざまな範囲で展開される市民活動を支援し、市民活動を活性化する拠点としての柔軟な施設である。(注1)
(2) 三鷹市を事例として〜生活コミュニティの醸成
三鷹市は全国に先駆けてコミュニティ施策にとりくみ、生活コミュニティの醸成のために、市内を七つのコミュニティ住区に分け、各地区ごとに市民活動の拠点としてコミュニティセンターを設置してきた。施設の運営管理は団体代表や公募の市民で構成された「住民協議会」に委託され(地方自治法二四四条の二第三項の公共的団体として)、自主的な運営が行われている。コミセンの特徴は高齢者、青年、児童といった対象の異なる施設を一つにまとめた複合施設であることとと、その管理が住民協議会に委ねられている点である。コミュニティに関わる行政施策、施設整備としては、一つの理想的な形態と評価することができる。(注2)
だが、コミセン活動にもいくつかの課題があることが明らかにされている。一つは、コミュニティ活動参加者の高齢化・固定化の問題である。これは、住民協議会の役員のなり手がないことや施設を利用する自主グループにも固定化の傾向が見られることである。また、施設利用に関する問題を住民協議会と共同で解決しようとする機運が自主グループ側に少ないことである。三鷹市は住民協議会連絡会の発足や事務局職員の処遇改善などによりコミュニティ施策の充実に努め、直面する課題に対処しようとしている。(注3)
鎌田慧氏は三鷹市のコミュニティ運動を評し、次のように述べている。「行政の権限がより小さくなって、市民のほうに委譲されてくるのは直接民主主義の理想かもしれない。しかし、その受け手がそれに耐えられるほどに成熟しているかがいま問われている。それに向かうのがコミュニティ活動だが、まだまだ、それもかなりの時間を必要とするようだ。(注4)」
これらの課題や困惑は、トップランナーとしての越えるべきハードルであり、コミセン活動は自治の実践として着目に値することは間違いない。