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川崎市では、これまでも学校の地域開放に向けて、昭和50年代から、校庭、体育館、プール特別教室が地域へ開放されてきた。開放施設は、学校教職員、PTA、青少年団体、青少年指導員、体育指導員、地域住民代表による学校施設開放運営委員会により運営されてきた。また、校舎改築にあたっては、平成5年度から地域の人々が広く利用できるよう特別活動室の整備を図っており、改築をすませた校舎には、普通教室2教室相当分の広さのコミュニティルーム、開放用玄関、湯沸かし場やトイレが備えられた。これらが、川崎市における学校開放の前史である。

今回の余裕教室転用は、近年、「余裕教室を使いたい」「学校は空いているのに」という市民の声が多く寄せられるようになったことに起因する。私たちはこのような状況に対応するために、庁内に、「川崎市学校施設利用検討委員会」及び「川崎市コミュニティ施設研究会」を設置し、市民のさまざまな意見や要望に基づき、学校の余裕教室の現状や校舎の配置状況を見てまわった。また、市民活動団体や、PTA、学校関係者の意見を伺って歩いた。

机上で考えていたことと異なり、学校のスペースは実際にはあまり広くはない。余裕教室があるとして訪れた学校で、子どもたちの教育環境の整備の遅れや教育機能の多様化に伴うスペースの不十分さに逆に驚かされることもあった。学校を開くことにより、変質者が学校に自由に出入りするのではないかと子どもたちへの危害を心配する父母の姿もあった。また、高齢者への配食活動を行う場所を探すために、日々苦慮している市民の真摯な心にも触れることができた。

余裕教室の転用にあたっては、父母や子どもたち、学校関係者の思いと地域社会の要望など学校をめぐるさまざまな意見の調整が求められる。これらのことは、実際に余裕教室を使用して新たな施設に改築しようとする時、さらに具体的な問題として跳ね返ってくる。地域のさまざまな市民意見をどう整理するのか、限られたスペースの中で市民要望をどう盛り込むのか、私たちの調整能力が問われていく。障害者のためのスロープをどうするか、入口をどこにつけるか、パーティーション、部屋の配置、防火扉の設置箇所など、市民合意を求めその一つひとつにきちんと向き合う必要がある。ここにコーディネーターとしての自治体職員の存在理由がある。このことを抜きにすると現場感覚を忘れた安易な批評に終始し、そして、事業はなかなか進まない。

 

 

 

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