○ 地域住民との協力体制の構築
公共施設の整備に当たっては、地域住民の理解と協力の下で行うべきことはいうまでもない。神戸市の例では、地域住民や業界団体等からなる委員会組織を設置し、整備すべき新たな施設の持つ機能を検討する際に、地域住民の意見を十分に汲み取る努力をしていたが、これは今後の公共施設整備のあり方の一つとして、評価されなければならない。
○ その他
大都市の中心部では、地価が高く、官民ともにその入手は容易ではない。従って、都心部における公共施設の整備に当たっては、既存の公共施設の有.効活用を図るとともに、民間施設を有効に活用し、また、学校等市民が利用する公共施設以外の行政が利用する行政施設の転活用も検討すべきであろう。
現在、これらの取組みは、殆ど単独事業で行われているところである。国における公共施設等の整備支援を見ると、その殆どが新設事業支援であって、中には既存施設の機能更新等を対象としないものも存在するところである。
今回のような既存施設の再活用のケースでは、上物の建設費用について言えば、新設する方が安く済む可能性もあるので、国としても、既存施設の機能向上や機能の転換に対する支援を拡充すべきであろう。
既存の都市インフラを活用したまちづくり事例は、空き学校を利用した事例であったが、その他にも民間と連携して行う事業など様々なケースが考えられる。今後、都心部の再開発ビルに間借りする地方公共団体が現れるのもそう遠くないものと思われる。実際、熊本県人吉市において、中心市街地活性化の観点から同様の試みが検討されているところである。
(3) PFI・民間活力の導入等による新たな公共投資の手法について
都市部における公共投資は、その地価が高いこと等から、他の地域に比べて大きな費用がかかることが予想される。今後、国・地方公共団体を通じた財政状況の見通しが必ずしも明るくない現状においては、如何に効率的に施設を整備するかという問題は先に述べたとおり、都市部においては、特に、少子・高齢化社会の到来を見据えた社会資本整備の必要性が増大しているところである。そこで、この項では、大阪市における取組み事例に対する考察を踏まえて、検討を行うこととする。(取組みの詳細は各論を参照)
1] 取組みの現状
○ 北区扇町開発土地信託事業
大阪市扇町地区の工業研究所跡地を活用した子供のための遊体験的学習施設として「キッズプラザ大阪」を整備し、地域周辺の振興発展に資することを目的としている。事業の実施に当たっては、土地信託方式を活用して、民間活力の導入を図っている。現在の見込みでは、総事業費約256億円に対し、予想配当約75億円、市税収入約127億円である。